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この講座を通して得た成果に

1]母と子に自然な親子関係の伝わり

2]我が子への手づくり玩具の作製作業で、子への具体的な愛情表現を学ぶ

3]受講者の親世代に当る年齢の先輩ママとの交流は、気軽な育児相談の井戸端会議となり、核家族や転勤家族が抱え込まざるをえない孤立化を未然に防げる

4]ボランティア活動の参加が、限られたゆとりの中での参加と思い込まれていた意識に変化が生まれた。自分のことだけから、人との関わりで育児中だからこそとの意識へとフットワークが軽くなっている

5]先輩ボランティアとの関わりで生活の知恵の伝達が生まれている

6]先輩ボランティアの課題であった、高齢化傾向で、活動の広がりに限界が感じられ、後継者つくりに悩んでいる現状で、児童館=若い力、を巻き込むことで活気が生まれた

以上のような点があげられる。

次に「おもちゃ病院」については、そのドクターの募集を市広報・地元新聞・館だより等で知らせたところ、会社員・公務員・大学生・職人等数人に応じて頂けた。現在、7名の活動の定着がみられている。3回の開院で、約60件の修理を行なえた。

この活動では、

1]修理を目前で体験した子どもが、玩具と共に生き生きしていった

2]ドクターとして参加されたお父さんたちが、機械との向き合いから、子どもとの向き合いで、子どもへの関わり方に気づかされていかれる

3]玩具を持って子どもと参加されたお母さんが、物を大切にすることを具体的な形として生活の中から子どもに伝えられている。又、親子で「治った」喜びの感動を共感出来、母親もまた子どもとの関わり方を学んでいる

4]共通した興味や趣味を通し、お父さん同士の連帯が生まれつつある

5]父・母・小学生・高校生・大学生・民生員・等地域の交差点としてコミニュケーションの触れ合いが生まれようとしている

以上のような成果が得られている。又、3回の活動の発展に、お父さんと遊ぶ計画をスパイスとして入れてみた。知らない友達のおじちゃんだけど、大切な玩具に命を吹き込んでくれた、いわば恩人のおじちゃん。遊びとなると、今度は子どもたちがリード。大人の知恵と子どもの知恵が交差して、生き生きとした空間が生まれた。お父さんの背中も温かだった。子どもと大人が、お互いを生かし合っている空間に児童館の役割を手応えできた瞬間であった。人の往来で活力を得る児童館は、そこに道草したい何かを発信し続けることを、今後も夢をもって取り組まなければならないであろう。

 

今後の課題

子どもたちの今を支援する為に、仕事の合間に関わろうとする前向きなお父さんたちの意欲を後押ししながら、その教育力を引き出す作業を粘り強く取り組まなければならないと思われる。児童館は「子どもの幸せ」を核にした地域文化の発信源となり地域サロンの場を提供し、分断された点を結びながら賑やかにネットワークの機能を果たすことが、機能として要求されるのではないだろうか。そこには、私共、施設職員の柔軟な価値観に支えられた行動力と粘り強い意志で、子どもや親の声を代弁するソフトパワーが要求されると考える。

児童福祉施設の現状として、目前のハードルを超える為のリスクは大きい。日本人には、横並びの安定を求める性格があるが、これ程の子どもたちからのSOSに応えるためには、関係職員の使命感に期待するしか活路は拓けないように思える。責任の譲り合いでなく、大人の生き方に信頼と安心を預けられるよう、立場や利害を超えたネットワークづくりが出来たらと、ボランティアコーディネーターの役割の今後を探っていくことを課題にしたい。

 

 

 

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