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今までも、広くボランティアを知ってもらうためにユニセフなど館外のボランティア活動・施設も紹介し、コーディネイトしていたが、今回の活動の中でも、あらためて自分にはどういうボランティアが向いているのか(施設ボランティア、イベントボランティアなど)、また児童センター内でもどういう活動が向いているのか(行事で子どものグループを受け持って側面的援助する・行事の準備などの裏方・日常の中で子どもと関わるなどの直接ボランティア、園芸・環境整備などの間接ボランティアなど)を探ってもらい、一番自分に合った活動を見つけてもらえるように考えた。

 

活動の成果

今回の活動を通じて、子ども達と関わるときに、今まで以上に子どもの目線に立ち、声かけなども考えるようになった。子ども達からもボランティアの関わりに対する評価や、「どうすればボランティアになれるか」と言う声も年々増えている。色々な職種や色々な分野の学校に通うボランティアを通して、子ども達も様々な社会の一端を垣間見る機会を持つことが出来ると思う。
また、最近地域で大人に「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえり」などの声を掛けてもらえる子どもは少なくなってきているが、ほとんどのボランティアが近辺に住んでおり、登録ボランティアを組織化・養成することで、道で子どもを見かけた時に気をかけ、声を掛けてくれるようになった。様子がおかしいときは、児童センターに知らせにきてくれる。子どもの変化を見逃さない大人の目が地域に増えることが、地域ぐるみで子どもを育てる事にもつながると思う。地域にボランティアが広がることで、ボランティアの表面的な部分だけでなく、その家族・友人も子どもの問題に関心を示してくれるようになった。地域全体に“地域で子どもを育てる(育つ)”意識が高まればもっと子ども達の本当の姿も見えてくるだろう。

また、誰かが自分を見ていてくれるという安心感は、子どもだけでなく、中・高生ボランティアにもあるようだ。中・高生ボランティア自身も思春期の中にあり、将来に対する不安を抱えていたり、学校や家庭などの人間関係で悩むことも多い。最近、小さな子どもと関わった経験がないまま親になることが問題になり、保育所での中学生の育児ボランティアを導入したりもされている。が、幼児や小学生(特に低学年)と関わり、砂場遊びやままごとをして遊んだり、けんかの仲裁に入ったりすることで、自分も人間関係に悩み出した頃に戻り、小学生の頃うまくいかずにずっと胸に閉ざしていたことが、疑似体験をすることで少し開かれたり、もう1度“育ち直し”ができることも、将来“地域で子どもを育てる大人になる”中・高生にとって大きな意味を持つのではないだろうか。

 

今後の課題

児童センターの活動に見合うボランティアをコーディネイトすることも大切であると思うが、ボランティアー人一人が負担を感じずに長く活動を続けられるようセンター内外でもコーディネイトしていくことが大切であると考える。多感な時期のボランティアについては、ボランティア活動や福祉施設に対して先入観や固定観念を持たせず自分なりの考えをもって活動できるよう援助しなければいけないが、児童センターとして何を望み、どうして欲しいかと言う事は分かりやすく明確に伝えていかなければいけない。

ボランティア同士協力しなければスムーズにいかないことも多々ある。そのためにはボランティア間の信頼関係を養うことも大切であり、職員がボランティア同士のコミュニケーションが取りやすくなるように、コーディネイトすることが必要である。昔に比べて、異年齢の子ども同士の交流が減ったことで、少し前まで中学生が「今の小学生は何を考えてるのかわからない」、高校生が「今の中学生は」と言っていた。児童センターで色々な年代の人と関わる(世代間交流)中で少しずつそれも薄らいでいったようだが、ボランティアとコーディネーターとの世代間ギャップもこれからますます広がると思われ、子どもとボランティア、ボランティアとボランティア(民生児童委員や各種関係団体も含む)の世代間格差による問題に対するコーディネイトも求められてくるだろう。

また、情報が簡単に手に入るようになった昨今では、インターネットや情報ダイヤルなどで児童センターのことを知り、遠方から飛び込みのような形で「ボランティアをしたい」と来る人も見られるようになった。体験ボランティアの受け入れと合わせて、気軽に“ちょっとボランティアしてみたい”と言う人の受入れ方など、受入れ体制を見直す時期にあるかとも思う。

“マンパワー”としてボランティアが必要とされていた時代は終わり、今は“質”の時代と言われている。ボランティアもボランティアとしての参加の場はどこにあるのか、知識を蓄え、しっかりと見極める視点が、コーディネーターにも、ボランティアにも必要になってくると思う。ここ何年か当センターのリコーダクラブの子ども達も同じ事業国内の施設の祭りや知的障害者施設のクリスマス会でボランティアで演奏したりもしている。いずれは、登録ボランティアだけでなく、児童センターぐるみでボランティア活動をし、子どもも職員も、広く一般社会に対しボランタリーな生き方ができるようなコーディネイトをしていきたい。そのためにコーディネーターの力量を高めることはもちろん、職員すべてが、コーディネイトできることが望ましい。

 

 

 

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