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1. 自然と人との共存とは

 

(1) 日本野鳥の会の理念

本会の理念については、『日本野島の会の理念と活動』(1992年)にまとめられています。この冊子は、発行時に各支部に配布された他、理事や評議員に配布されるものです。以下に抜粋する「第I章 日木野島の会の考え方」の他、「第II章 日本野鳥の会の目的と性格」「第III章 日本野鳥の会の活動と基本方針」で構成されています。なお、会誌『野鳥』では、「第I章 2.日本野鳥の会の理念(3)理念の要旨」の部分のみを毎号掲載しています。

 

1.「野鳥も人も地球のなかま」

 

人類は、誕生以来、さまざまな生きものと共に生きてきた。この長い歴史の中で、人間が自然と切り離しては存在し得ない基本的な関わりが形成された。その後、農業や工業を発達させることによって自然を破壊するという他の生きものにみられない力や技術を人間は行使してきた。しかし、進化の歴史の中で培われた自然への想いは、自然破壊が進む中でそれを抑止する効果として大きく関わってきたのではないかと考えられる。人間の自然に対するこの基本的な関わりは、今日までわれわれの心に脈々と生きている。そのため個々のケースでその表れ方は異なっても、時代を越えて自然保護の思想形成や自然を守る原動力となっているものと考える。

第一次産業は自然との調和の中で安定して続けられていたが、近代国家へと脱皮成長するとともに、その安定に破綻をきたしていった。この過程は、欧米の産業革命にみられるように、無尽蔵とも思えた自然資源の過度の利用を引き起こし、その結果、自然の破壊に対する反省から自然を守るべきだとする近代的自然保護の考え方が出てきた。

我が国では明治維新後、封建領主により守られていた大型の鳥獣類が乱獲により激減した。さらに、人間活動の拡大により自然環境の破壊も進行していった。今日の自然保護の考え方を述べる時欠かせないのは、一つの先駆的な動きとして1930年代から始まった野鳥に対するものである。

 

 

 

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