ま え が き
我が国の工業界では、市場競争力や高収益性を求めて製品の品質の向上に最大の努力がはらわれている。そのための品質管理も、第2次世界大戦後に始まるJIS制度の導入や統計的手法を用いた品質管理の導入といった揺藍期、単に製品のみを対象とするのではなく全社的な経営手法に品質管理を適用する(TQM)成長期を経て、国際的に通用する品質管理・品質保証システムであるISOを導入するという成熟期へと発展し現在に至ると共に、さらには21世紀に向けて環境問題が加味され、一層その重要性を増して展開、推進されている。
なかでも、船舶に搭載される各種の機器類は、国民の人命と財産を守るという使命から制定された船舶安全法に基づき、製品の安全性と信頼性を確保するため、設計時点における技術基準や製造段階、検査検証段階における実施要領等実施面においてもキメの細かい運用が求められている。
製造事業場における製品の製造形態が、従来は原材料や素材は外部から購入するもののその後の加工、組立、確認運転、性能検査といった工程は全て自社で行うという製造方式(以下、本調査研究報告書では“一貫型製造方式”という)が主流であったのに対して、近年では企業の合理化や効率化を求めて生産方式の改革がすすめられ、その具体策の一つとして、工程の一部を外部に委託して行うという製造方式(以下、本調査研究報告書では“分散型製造方式”という)が台頭し、さらには生産拠点や市場のボーダレス化が急速に進むにつれ国際的レベルで展開する状況へと推移しつつある。
一方、法規の運用面でもその歴史的過程の中で従来型の一貫型製造方式を念頭においたものとして構築されているため、分散型製造方式の形態に直接適用するにはなじみにくい面を有したものとなっている。
本調査研究では、このような現状を踏まえ、これからの舶用品の製造事業場が採るべき品質管理の在り方として、従来のような一貫型製造方式を対象とした品質管理手法をそのまま適用展開していて問題はないのか、或いは生産方式の変化に即応した新たな品質管理の在り方を構築する必要があるのかを検討し、かつ、その方策を模索するため、産学官の学識経験者の協力と日本財団の事業補助金の交付を受けて実施した。