第4章 集積回路
4・1 集積回路の概要
集積回路(Integrated Circuit)は英語の頭文字をとってICと呼ばれており、わが国においても集積回路というよりICと呼ぶほうがより親しみやすくなっている。したがって本書においても以後ICと記述するものとする。ICは第2章と第3章で述べたトランジスタやダイオードなどの半導体を、その関連の電子回路とともにきわめて小型にまとめて、一体として作りあげた電子回路である。JIS C5610(集積回路用語)によれば、集積回路とは、「二つ又はそれ以上の回路素子のすべてが、基板上又は基板内に集積されている回路であって、設計から製造、試験、運用に至るまでの各段階において、それを一つの単位として取り扱うものをいう」としており、現時点ではそれを作るのに半導体技術と膜製造技術が用いられるとしている。
ICの分類には、いくつかの分け方がある。まず、製造技術的にみると上の定義のように半導体技術によるものと膜製造技術によるものとがあり、
(1) 半導体集積回路あるいはモノリシック集積回路
(2) 膜(薄膜又は厚膜)集積回路
(3) 混成集積回路
に分けることができる。半導体ICとモノリシックICとは定義的には若干異なるが、半導体ICの大部分が後者であるとすることができる。モノリシックとはギリシャ語で、単体mono=singleの石(lithos=stone)という合成語に相当する。すなわち、シリコンの単結晶からなるICという意味である。これに対して、薄膜ICあるいは厚膜ICは基板上に構成される回路素子とその接続が薄(厚)膜で作られている回路をいい、混成ICはそれらの混合したものということである。
混成ICは、ハイブリット(hybrid) IC又はHICと呼称され、その定義は「絶縁基板上に膜の形で導体及び抵抗を形成し、これに半導体素子やICを実装して一体化した集積回路」となっている。しかし、近年、抵抗のチップ化等により、上記の定義文は「・・・導体及び抵抗・・・」が「・・・導体あるいは抵抗・・・」へと、HICの概念は拡張されてきている。
更にプリント基板上にハイブリット技術が浸透し、ミニモールド形トランジスタ、フラットバック形IC、抵抗コンデンサーのチップ化などの技術が急速に活用されてきている。このプリント基板実装を含めたもの、すなわち超小型プリント基板をも広義のHICと呼んでいる。