したがって変調回路としてはDSC、NBDP等の端末装置より出力される“1”と“0”の直流信号を1700Hz-85Hz,1700Hz+85Hzの信号にしてSSB送信機に入力するものであり、復調回路は逆にSSB受信機から出力される1615Hz及び1785HzのFS信号を“1”と“0”の直流信号に換え端末装置に出力するものである。
3・3・3 位相変調(PM;Phase Modulation)
位相変調は信号波にしたがって搬送波の位相を変化させる変調方式である。
いま搬送波をv=Vcos ωt、信号波をvp=Vpcos Ωt とすると変調波の位相はγp Vp cos Ωt となる。
ここにγpは比例定数である。したがって位相変調波は
vm=Vcos(ωt +Ωd cos Ωt) (3・23)
となる。ただしΩd=γp Vpである。位相変調波形は図3・20(e)の通りである。
位相変調は信号波を積分した後で周波数変調を行えばよく、 復調も周波数変調波の復調回路がそのまま用いられる。
位相変調で信号波が“1”あるいは“0”のディジタル量の場合は、PSK(Phase Shift Keying)が用いられる。PSKでは搬送波のみを使用し、“1”、“0”は搬送波の位相で表す。この方法は2相式DPSK(Diff-erential PSK)とよばれており、海事衛星通信装置にもテレックス信号、リクエスト信号の変調方式に利用されている。PSKはこの他に高速通信用に数ビットのディジタル信号を一度に変調する多相位相変復調方式がある。
位相変復調方式の特長はその原理からわかるように周波数変復調方式とほぼ同じである。
3・4 周波数変換回路
受信機において高周波の微弱電波を受信して増幅する場合、そのままの周波数で高い増幅率の増幅を行うと、発振を起こして動作が不安定になる。一定の周波数の増幅に対しては、中和コンデンサを用いるなどして動作の安定化ができるが、広い周波数範囲の受信電波を増幅しようとすると、また別の周波数で発振が生じ動作が不安定になってしまう。これを防ぐため、受信電波そのものの増幅ではあまり増幅率を上げず、局部発振器と呼ばれる発振回路で作った周波数と混合して周波数を変え、低い一定の周波数にした後に増幅率を上げて増幅する方法がある。これをヘテロダイン方式と呼び、受信電波の周波数をある一定の低い周波数に変える操作を周波数変換又は混合と呼んでいる。