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各原子は周囲の4個のGe原子と各々1個づつの価電子を共有しあい、あたかも8個づつの価電子をもっているかのような状態で結合している。このような状態**では電子は各原子から離れて自由に動き回ることができない。このような半導体は真性半導体と呼ばれ、ほとんど電流を流すことができない。

 

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図2・3 ゲルマニウムの結晶構造

* 陽子と電子のおのおの1個が持っている電荷量の絶対値は等しく、(-)(+)のみが異なる。したがって同数の陽子と電子を集めたものは全体として電気的に中性である。

**水素原子とヘリウム原子を除いて、他の原子は8個の価電子を持った状態が最も安定である。

 

2・1・3 真性半導体の電気伝導

前項でGeの結晶中では電子は原子核に拘束されていて自由に結晶中を動き回れないと述べた。しかし実際には熱や光などのエネルギを加えることによって、価電子のエネルギが高くなると、その価電子は自由電子となって結晶中に飛び出してゆく。温度が上がれば上がるほど加わるエネルギが増し、このような電子が増加する。もしこのような半導体の結晶に電圧が加えられると、結晶は電気を導き、温度が高いほどその伝導性は良くなる。

電子が飛び出したあとには、ぬけ穴(ホール)を生じているが、この穴の部分は、はじめ(-)の電荷を持った価電子があったときには電気的に中性であったので、そのホールは電気的に(+)とみられる状態にある。このためこのホールを正孔(せいこう)と呼ぶ。このホールに近くの結合部から飛び出した価電子がおちこむ場合もある。この場合にはそのホールは消滅するが他の部分にホールを生じるから、見かけ上、ホールが初めの位置から新しいホールの位置まで移動したことになる。

 

 

 

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