いま、t=0の時聞に送信電波を発射するものとすれば、送信波を送ると同時にスポットはCRTの中心0から移動しはじめる。この移動の途中に反射物標があると、その点が輝点となって光り、反射物標があることを示し、その点の中心からの移動距離が、自船から物標までの距離に対応することになる。
また、偏向コイルは空中線の方向と同期した回転機によりCRTのまわりを回るから、中心から移動するスポットの移動方向も回り、その方向が空中線の方位に対応する。
このようにして、CRT面には、輝点が次々と物標の方位と距離とに対応して写し出され、これがCRTの残光性によって空中線が一回転してもそのまま光っているから、全周からの受信信号が写し出されて、空中線の位置を中心とした360度の方向の状況がCRT面上で観測できることになる。
なお、CRTに関する詳しいことは、基礎理論編第7章に述べてあるので、参照されたい。(7・4節……CRT、レーダーブラウン管、カラーブラウン管、7・5節……LCD等固体表示器)
3・7 表示器と空中線との同期
掃引線は、空中線の回転と同期して回転させる必要がある。その方法として、
(1) 回転同期方式
(2) レゾルバ同期方式
(3) サーボ同期方式
とがある。
3・7・1 回転同期方式
回転同期方式は、シンクロ発信器とシンクロ受信器が用いられるのが一般的である。
普通は、歯車装置でシンクロの回転数を空中線の10倍程度に上げ、指示器では逆にこれを1/10に落として偏向コイルを回している。これは相互の相対角度誤差を小さくするためで、いま、シンクロ発信器とシンクロ受信器との間にθ度の回転角度の差が生じたとしても、空中線と偏向コイルとの間ではθ度/10の角度差となり、角度誤差を小さくすることができる。ただこの場合、空中線の回転36度ごとにシンクロ発信器とシンクロ受信器は一回転するから、空中線と偏向コイルが同期する点は、空中線の一回転に対して36度おきに10箇所生ずることになるが、そのうちの一箇所だけが空中線と偏向コイルの正しい同期位置となる。このような関係において、いま、この装置のスイッチを切ると、空中線がその惰性でしばらく回って止まった位置と、偏向コイルがその惰性で回って止まった位置とでは、お互の角度が異なってくる。