3dB結合器というのは、図3・22のように空中線からの受信信号(RF)を半分ずつに分けて、これらをクリスタルダイオードで検波し、同時に、局部発振器の出力(LO)も半分ずつに分けて合成するが、その位相がお互いに180度なので局部発振器からの雑音は相殺され、約3dB S/N(信号対雑音比)が改善される。このため、3dB結合器と呼ばれている。
マイクロ波信号のミキサとしては、クリスタルダイオードが広く使用されている。これは、ダイオードの非直線性を利用して二周波を合成するものである。このクリスタルダイオードは図3・23に示すような構造で、シリコンとタングステン線とを特殊な容器に収めたものである。クリスタルの面には、感度の良い点とそうでない点とが分布しているが、タングステン線のとがった先をその最も感度の良い点に当て、その点が移動しないように封入剤を入れて水密にしたものである。クリスタルダイオードの抵抗をテスターで計ると、その電圧の極性の加え方によって異った値を示す。この両方の値の比の前後比(又は順逆比)と呼んでいる。この方法はクリスタルダイオードの良否を調べる簡略法であり、良好な動作をしているときの前後比は、順方向で400Ω以下、逆方向の場合は10kΩ以上である。クリスタルダイオードの電圧電流特性は図3・24に示すように負電圧に対して高い抵抗を示し、正電圧に対して低い抵抗を示す非直線性の特性をもっている。
クリスタルダイオードによるミキサの等価回路は図3・25に示すとおりである。出力としては、クリスタルダイオードの非直線性の特性により、二つの周波数の和と差が出てくるが、LとCの同調回路はその差の周波数、すなわち中間周波数に同調するようになっているので、同調回路の両端には中間周波数の電圧のみかかり、この電圧を中間周波増幅器に加えることになる。