3・4・2 導波管と同軸管
送信機から空中線への伝送線路としては、5GHzと9GHzのレーダーでは導波管が用いられているが、周波数が3GHz以下になると同軸管が多く用いられている。これは、周波数が低くなるに連れて導波管の寸法が大きくなるためである。一方、同軸管は中心導体を中心位置に保持するため、外部導体との間に誘電体を入れる必要があり、このため、3GHz以上の周波数になるとこの誘電体による損失が多くなり、また、その損失による発熱のため、扱い得る電力も限られてくるからである。そこで、この損失の原因となる中心導体を取り去り、中空の金属管として、マイクロ波の伝送線路にしたものが導波管であり、伝送中の損失が少なく、かつ大電力を扱うことができる。
導波管及び同軸管については、基礎理論編第3章の3・5節と3・4節に記述してあり、また、それらの取扱いについては、装備艤装工事編第3章の3・5節と3・6・1項に述べられているので、これを参照されたい。
3・5受信機
レーダーの受信機に求められる性能は、空中線で受けた微弱なパルス信号を増幅してCRTに表示するのに十分な振幅を持つ映像信号を作ることにある。一般の受信機の性能では、選択度、感度及び忠実度が重要であるが、レーダーの受信機では、必要条件として下記のことが要求される。
1)雑音指数(ノイズ・フィギュア)がよく、感度のよいこと。
一般の受信機では、空電や人工雑音が相当あるなかで弱い信号を受信するので、選択度特性が重要となるが、レーダー波の範囲になると、空電や人工雑音はほとんど無視できる程度に小さく、むしろ問題になるのは受信機自体が発生する雑音で、これにより弱い信号が受信できるかどうかの限界が決定される。これを雑音指数といい、値が小さいほどよいことになる。
2)必要な帯域幅があること。
入力のパルス波形を正しく受信機からの出力とするためには、十分な帯域幅と位相特性が必要である。
3)パルス応答性がよいこと。
パルス波形を忠実に出力するだけでなく、非常に大きい信号のすぐ後に続く弱い信号も正しく増幅する必要がある。そのためには、大きい信号のすぐ後でも受信感度が直ちに正常に復帰することが必要である。
4)海面反射、雨雪反射除去がよくできること。
レーダーの場合、これらの除去のため、STC、FTC回路が設けてある。