マイクロ波より更に波長の短いミリメートル波は空中を伝搬するときに空気のうちの酸素と水蒸気によって減衰を受ける。その減衰の程度は一気圧の大気とその大気中に1%の水蒸気を含んでいるときは、図9・15に示すとおりであって、かなり大きなものである。
9・8 レーダー電波とその特性
マイクロ波の伝搬のうち、レーダー電波の場合は、電波がレーダーの空中線から物標に当たって反射し、また、元の空中線に戻ってくるという往復電波を扱う点で一般の通信などの電波伝搬と若干異なる扱いとなる。それらをレーダーの特性と併せて次に述べる。
9・8・1 レーダー方程式
レーダーにおいて、レーダーのいろいろなパラメータ、例えば、送信電力、空中線利得、電波の波長、物標の電波反射能力、物標までの距離及び受信機の入力などを使って、レーダーがその物標を探知できるかどうかなどのレーダーの性能を表す数式をレーダー方程式と呼んでいる。レーダー方程式の基本式は次のとおりである。
ここでPrは受信電力(W),Ao は受信空中線の有効面積〔m2〕、Go は送信空中線の利得、Ptは送信電力(ピーク値)〔W〕、Rはレーダーと物標との間の距離〔m〕である。σはレーダー断面積と呼ばれる値であって、物標のレーダー電波の反射能力を表す。レーダー断面積については、のちに9・9・5 節で詳しく説明をする。レーダーでは空中線は送信と受信とが共用されるのが普通であり、GoとAoの間には
Go=4πAo/λ2 または Ao=Goλ2/(4π)
の関係があるので、(9・12)式は