2・9 設備と電気関係
船舶の諸設備の中には、それぞれ電気関係の設備が船の種類、航路、目的によって、種々装備されているが、次にその大略を示す。
2・9・1 居住、衛生設備
乗組員、旅客の起居、食事、事務、娯楽、衛生に必要な諸設備を完備する。例えば、快適な照明、冷暖房施設、ラジオ、テレビジョン、オーディオセット、電気厨房装置、洗濯機、換気ファン、等で旅客船にあってはその他プール、娯楽設備、読書室、喫煙室、社交場等がある。
2・9・2 航海用具等
航海上必要な船灯、信号灯、磁気コンパス、ジャイロコンパス、レーダ、音響測深機、ログ、ロラン受信機、無線方位測定機、無線装置、デッカ受信機、G.P.S受信機等。
2・9・3 操舵設備
船の進行方向を操縦する最も重要な設備である。海峡、内海等で操舵装置に故障がおきるか、又は操縦を誤まれば大変な事故につながる。それ故に慎重に設備されている。
動力による操舵装置の動力機械は、船橋で遠隔制御できるようになっている。また、主の操舵装置の故障の場合の処置として補助操だ装置を有するものもある。なお、故障した場合には船橋に可視、可聴の警報を発するようになっている。また、ラダーアングルインジケータを装備することになっている。
動力としてはヘルショー(Hellshow)、ジャネ式(Janney)等の電動油圧式と全電気式とがある。
2・9・4 揚錨及び係留設備
船が沖泊りの場合には、必らずいかりを降して停泊する。また、衝突の危険のある場合にもいかりを降す場合がある。
船舶設備規程によれば、いかり重量150kg以上の場合は、揚錨設備を必要とする。動力として電動機を使用すればこれを、電動ウインドラス(motor windlass)という。
係船用として、キャプスタン(capstan)又はムアリングウインチ(mooring winch、係船機)を使用する。動力として電動機を使用すればこれらを電動キャプスタン又は電動ムアリングウインチという。船を岸壁又は桟橋に係留する場合は、投綱によって陸上のボラード(bollard)(図2・12参照のこと)に係留索を結びつけ、これをフェアリーダ(fairleader)(図2・13参照のこと)を通して、キャプスタン又はムアリングウインチのドラム(drum)にからませ巻き取り、ゆっくり岸壁に接近させる。
2・9・5 荷役設備
貨物船の荷役には種々の方法があるが、例として、電動油圧クレーン設備を図2・14に示す。従来の電動クレーンやウィンチにあっては、極数切替電動機やサイリスタレオナード方式が採用されていたが、本方式では定速の電動機で油圧ポンプを駆動することで、SLEWING、LUFFING、HOISTINGの運転を可能としている。また、最近では荷役効率を上げるためコンテナを使用したコンテナ専用船やフォークリフトなどの自走車輌で荷役を行うロールオン・ロールオフ船もできている。