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港湾の管理運営に関する国際ワークショップ公的セクター・私的セクターの役割

古市正彦

 

昨今、各種社会資本整備における政府と民間の役割分担に関する議論が活発に行われています。港湾分野では、英国及びニュージーランドにおける多くの港が民間所有という形態で民営化されています。ドイツにおいて港は地方政府の所有となっており、かつ、大河川の河口部から港までの水路の建設及び保全等は連邦政府の役割となっています。我が国はドイツと良く似た形態をとっています。

公的セクターが管理する港湾であっても港湾荷役(Cargo Handling)に関しては、多くの港で民間に施設を貸し付けるなどしてその運営(Operations)も民間に任せている例が世界的に多くなっています。

どちらの形態が優れているかは一槻に結論付けられませんが、発展途上国においては絶対的な資金不足が理由で民営化を目指す傾向があります。

そこで、(財)国際臨海開発研究センターでは平成10年2月23日〜24日の2日間にわたって標記ワークショップを開催し、ドイツ(ハンブルク港)とニュージーランド(タウラン方港)より港湾管理の実践者を招いて、「所有と運営」、「政府(国と地方)と民間」などの観点から、両国の港湾整備と管理運営における公的セクターと私的セクターの役割について講演していただきました。当日は約50人の参加者と議論を深めましたが、非常に有意義な講演でしたので当日の講演及び議論の槻要を講義録としてご紹介することとしました。

なお、講義及び議論の内容に関する聞取り違い、誤解、誤訳等につきましては全ての責任はワークショップ事務局にあることを附記いたします。

 

1「公共所有-ハンブルク港の経験」

デイルク K.ベーレント

(ハンブルク州経済省 国際関係・海運部長)

 

1. はじめに

今回のセッションのテーマは、港湾の公共あるいは民間所有という対照的なものを含んでいます。私としてはハンブルク港の体験に基づき、公共所有の側に立って弁論いたします。ハンブルク港は欧州の大きな海港であり、ドイツ最大の港です。われわれの見解は、主要な競争相手も包含しています。つまり、ベルギーのアントワープ港、オランダのロッテルダム港などは、やはりハンザ同盟の仲間であり、地方自治体の港です。その意味では、私は、ハンブルク港の代表としてのみならず、ある程度ヨーロッパの代表としてお話しすることになると思います。

 

2. 港湾の多様性、機能及び重要性

港湾は世界的に多様性があることが特徴であると思います。つまり場所、規模、目的、取扱貨物、設備、組織などは、歴史的、地理的、法律的、あるいは行政上の理由で非常に多様化しています。このことは、港湾地域の活動をみるともっと顕著です。荷役は、ばら荷であったり、雑貨貨物、コンテナ、車、そして保管と物流、フェリーとクルーズ、定期船サービスなどがあります。この写真では、フェリーが出航したばかりです。また造船、修繕船、その他の港湾作業として、製鉄所、発電所などでは、海外から入ってきた原料を処理しています。漁業については、今やドイツではほとんどみられません。そしてレジャーボー卜のためのマリーナです。

だれも世界の港湾の数を計算した人はいません。少なくともヨーロッパではおりません。専門家たちは、おそらくEU(欧州連合)では4000港あるのではないかと計算しています。しかし正確な統計を入手するのは困難です。私は、いろいろなソースを使って、年間の港湾での取扱貨物量(トン数)、そしてEUにおける13海運加盟国の商業港の数をリストアップしてみました。ここでは主に1994年ベースの数字になっています。全体的には、629港において30億トン弱の海上輸送貨物が取扱われており、いかにこれら港湾が経済上重要であるかがわかります。さらにこれを強調すべきこととして、日本の運輸省が1997年に発表している数字がありますが、これによると、21の特定重要港湾、112の重要港湾、969の地方港湾があり、合計で1102港があるということです。総取扱貨物量は34億トン弱(1994年)ということです。

 

 

 

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