ウ. 港湾の財政的運営形態
DPAはドバイ港の管理運営主体として設立され、利用者からの使用料収入をもとに運営費用、施設の更新費用を賄う形で運営されており、財政的に首長国政府から独立しているということであるが、財務内容の公表はなされていない。また、DPAはドバイ港が完成したあと設立された組織であり、当初の港湾の航路、岸壁等の初期投資は首長国政府自体によってなされたものであり、それらのコストをDPAがカバーしているかどうかは不明である。DPA幹部の意見によれは、今後も大規模開発の際には、首長国政府資金が投入されることもあり得るという見解であった。このような意味でDPAは財政的には政府から完全に独立しているわけではなく、必要に応じて政府からの政策面・財政面での関与が存在している。したがってDPAはポートオーソリティという名前を用いているが、いわゆる日本の公団と呼ばれる組織の運営形態とは異なるものである。
もともとドバイ自体が貿易立国で、港湾施設の整備水準そのものがその国の経済動向を大きく左右するため、港湾は国家存立の基本的なインフラであるという認識であり、港湾単体の独立採算性のみに着目した管理運営形態は採用されていない。
(6) ドバイ港をとりまく最近の情勢
ア. 中東のハブ港としての地位
ドバイ港の取扱い貨物、特にコンテナについて言えば、トランシップ貨物率が約50%である。このような高率のトランシップ率の背景には、中東諸国の中での商業的地位や背後のフリーゾーンの効果などのドバイ固有の条件によるところが大きいと思われるが、本来トランシップ貨物は地理的、経済的条件に有利な港で扱われる性格のものである。UAEの国内でも後述するようにシャルジャ首長国のホールファッカン港が中東地域におけるトランシップセンターとして成長してきており、近隣諸国でも大規模コンテナターミナルの開発が相次いでいる。
1] オマーン国サラーラ港開発計画
オマーン国のサラーラ港が98年の11月に開港した。欧州-アジア航路のメインルートに近く、ホルムズ海峡の外側に位置する絶好のポジションが同港の強みである。この有利な立地条件とマースク・シーランドの協力を得て一気にこの地域での中継港としての地位を固めようとしている。ドバイ港にとっても相当の脅威となるはずである。