2) 管理・運営の形態
市場経済導入に関しては、調査対象3国の中ではポーランドが最も進んでいるといえるかもしれないが、概していえば港湾管理者として株式会社の形態をとったとしても、市場経済の経験という点では歴史的空白が長かったという事情もあり、その実態としてどれだけ“株式会社”として機能しているかは疑わしい。
これら3ヵ国はこれまで国民皆公務員の国であり公社の子会社までみな元公務員で、資本主義諸国の多くの港湾がそうであるように港湾サービスの多くを民間に委ねるのではなく、港湾管理者直営の港湾サービス部分も多い。またそれが雇用対策として位置づけられている面もある。イリチェフスク港は自動車運送業まで手がけているとのことであった。
これらの国々はまだ体制移行期の試行錯誤を繰り返している段階で、市場経済体制が十分定着し他国と競争できるようになるまでには、今少し法制の整備、ノウハウ及び資本の蓄積、さらには通貨の安定等のための移行準備期間が必要である。
以上みてきたように、東欧諸国の港湾の管理・運営に関し実質的には公的セクターと民間セクターの区分は明確であるとはいいがたい。同地域の港湾管理・運営の分類を検討するには同地域の市場経済への移行の動向について今少し時間をかけて見守る必要がありそうである。