第4節 日本における港湾管理運営
1 港湾の管理運営に関する基本的考え方
1-1 港湾行政の統一
港湾は海陸交通の接点で、港湾を中心に各種の経済活動が広く営まれている。これらの活動を助成し、あるいは規制する各種の行政が港湾を場として展開されており、これらの行政に係る多くの法令が制定されている。この中で、昭和25年に制定された港湾法は、基本的な性格をもつもので、そこにおいて港湾の開発、利用および保全に関する権限を、地方公共団体が設立する港湾管理者に付与し、施設としての港湾の管理に関する港湾行政がほぼ統一されている。
1-2 地方自治の尊重
その基本理念として地方自治の尊重を十分配慮しており、管理者となるべき者を地方自治体に限定し、国は国家的利益を確保するために必要な最小限度の範囲で港湾管理者を監督することとしている。
1-3 私企業への不干渉
港湾管理者は、民間企業が行いえない公共的、非営利的分野における港湾施設の管理、役務の提供、環境の整備等の業務を行い、港湾計画その他港湾の総合的な開発、利用および保全に支障がある場合に必要な最小限度の干渉を行うに止めている。つまり、港湾管理者は民間企業と競争して営利事業を営んだり、民間企業の自由公正な活動を阻害することを避けなければならず、また、施設の利用に関して不平等な取扱いをしてはならない。
2 港湾管理行政
港湾管理行政は、施設としての港湾の管理に関する行政と、港湾空間において行われる諸活動に関する行政に分けることができる。
(1) 施設としての港湾の管理に関する行政
施設としての港湾の管理に関する行政は、港湾区域内の水域および港湾施設ならびにそれを運営する人的物的手投の統一体としての施設を維持し、修繕し、他人に利用させることに関する行政であり、その主体は港湾管理者である。
(2) 港湾空間において行われる諸活動に関する行政
港湾空間において行われる行政は、目的が異なるに従ってその内容も種々である。港湾内で私企業が行う諸々の行為の秩序の確立を目的にするものや、港湾内の交通の安全を目的にするもの、伝染病の予防を目的とするもの等数多くのものがある。更に、港湾を場とするといっても、水域のみを対象とする場合、陸域のみを対象とする場合、水域および陸域の両者を対象とする場合などさまざまである。このような、港湾を場として行われる各種の行政は以下のとおりである。