第3節 欧州各国における港湾の管理運営
1 港湾の管理運営に関する基本的考え方
欧州における統一的な港湾政策は存在しておらず、各国によって港湾の管理運営に関する基本的な考え方は異なっている。
今回の調査対象国であるドイツ、オランダ、ベルギーにおいては、国の関与の度合いは極めて低く、競争的環境の中で港湾管理者が独立して管理運営を行っている。また、フランス、スペインにおいては、歴史的に国の地方に対する関与の度合いが強い地域であること、また、北海に面する前述の3ヶ国に比べて競争的環境が緩やかであることなどから、港湾の各種サービスの多くを自ら提供するなど競争力向上より雇用創出に力を入れた運営を行っている。
ドイツ、オランダ、ベルギーの港湾ではLand-owner型港湾管理者として港湾内の上地を所有し、Stevedoringなどのカーゴ・ハンドリングを行う民間会社に長期に貸し付けて収益をあげている。ハンブルグ〜アントワープ域内にはハンブルグ、ブレーメン、ロッテルダム、アントワープ港などのコンテナ化が進み、かつ、競争力のある港湾がひしめいているが、そのなかでも自然条件に最も恵まれているロッテルダム港が土地のリース料、港湾使用料などを決定する場合のプライス・リーダーとなっている。自然条件の厳しい港湾では、外海に面する防波堤の建設や大河川の航路浚渫などの費用を国が負担するなどして国際間での競争力を維持できるような仕組みとなっている。また、港湾管理者が提供するPilotageやTowingなどのサービスについては管理者自らが行う部分と民間に委託する部分があるが、競争力を維持できるように委託化を進めているがその考え方は国によって異なる。
一方、フランス、スペインのように左派勢力が政権を取った経験のある国においては、歴史的に国の地方に対する関与の度合いが高いうえに、港湾管理者がその地域において有力な雇用源となっていることから、基本的にはLand-owner型港湾管理者であるものの、港湾管理者が様々なサービスを自ら直営で提供する傾向にある。地中海に面する港湾の多くはその背後圏が地形的に山脈で分断されており、他地域の港湾との競争的環境が北海沿岸の港湾に比べて緩やかであることから、競争力向上より雇用創出に重点を置いているようである。