7 港湾における経営の効率化、サービス向上への取り組み
7-1 民間委託業務の拡大
アメリカ港湾協会に所属する主要港の調査12によれば、米国主要港72港のうち、自らオペレーションを行っているもの31港、オペレーションはすべて民間事業者に任せているもの(家主的港湾管理者)34港、一部オペレーションを行っているもの7港である。米国では、船舶への積み卸しはすべて組合員13が行う必要があるため、船舶荷役業務は民間のステベ会社が行っている。したがって、港湾管理者によるオペレーションとは、岸壁から背後への運搬または岸壁への輸送である。
このようなオペレーションを港湾管理者本体と切り離すため、港湾管理者が事実上の運営子会社を設立する場合がある。ハンプトンローズ港(バージニア港湾公社;VPA)では、1982年、非営利・非株式のVirginia International Terminals(VIT)社を設立し、ターミナルオペレーションを一括して実施させるようにした。これは、VPAは船舶荷役業務を行うステベと直接に契約できないが、VITは契約できるためでもある。VITのボードメンバーは7名で、VPAにより任命され、利益は、港湾開発に投資することとされている。
運営子会社を設立した例は、メリーランド港湾局が設立したMaryland International Terminals Inc.、タンパポートオーソリティが設立したTampa Bay International Terminals Inc.、デラウェアリバーポートオーソリティが設立したThe Port of Philadelphia and Camden Inc.、などがある。米国では従来から、ポートオーソリティは組合とターミナルオペレーターあるいは船社代理店との協議には参加せず、州によっては、法律でこれを禁止しているところもある。
民間の参加の仕方については、一つの港においても数形態が混在しており、ポートランド港では、第1ターミナルは長期リース、第2ターミナルは運営契約、第4ターミナルはテナント6社に土地をリース、第5ターミナルは民間施設、第6ターミナルはコンテナターミナルであるが、ポートオーソリティが運営している。ただし、船舶荷役やコンテナ運搬は民間のステベ会社が行っており、ポートオーソリティはサービスを提供していない。
オークランド港では、1957年まではすべての施設をポートオーソリティが運営していたが、その後ターミナルをリースする方式に変更し、現在では、10社とターミナル利用契約、13ターミナルについてリース契約を結んでいる。利用契約は、3-6年、リース契約は2-40年の期間の契約となっている。
12/Privatization and Its Implications for US Public Seaport Agencies, R.B. Sherman, AAPA, 1995
13/International Longshoremen's Association(東海岸)、International Longshoremen's and Warehouseman's Association(西海岸)