日本財団 図書館


第三章 世界の主要港湾における管理・運営動向(総括)

 

3ヶ年にわたり世界における主要港湾の管理・運営について調査を行ってきた。同調査結果を踏まえて管理・運営の主体並びに民営化の度合いについて、どのような世界的動向を読みとることができるか、また、途上国の港湾の管理・運営についてどのような方向を提示することができるか、以下のような整理を行った。

 

1 荷役オペレーション(運営)分野での民営化進展

港湾管理・運営分野での民営化が進んでいるといわれるが、それは荷役オペレーション(運営)分野での民営化が中心であり、港湾の管理分野(港湾計画等政策的意思決定に関わるもの)は依然として公的な港湾管理者が担当している港が多い。

 

2 「民営化」の意味

世界的に先進国、開発途上国の別を問わず民営化の進展がみられる。その場合、港湾全体(の開発権)を民間に売却する“狭義の民営化”から、運営を民間企業に委託したり、民間経営手法を導入したり、又は施設をリースするという“広義の民営化”まで様々な形態がとられている。

 

3 先進港の多くは「家主型」

香港、シンガポールを除くと、世界コンテナ取扱いランキングのトップテンに入るようないわゆる先進港といわれる港湾の多くは、管理・運営のタイプでみると「家主型管理者」港湾に位置していることがわかる。所有権は手放さないで、土地(あるいは施設も含めて)をリースし、ターミナル運営を民間セクターに委ねることにより民間経営手法を活用するタイプである。

地域的な傾向をみるとおおまかに3つに分けられる。第一に、主に中央政府の一部局が港湾管理者として港湾の計画、整備に大きく関与する東アジアの諸港湾(高雄、釜山、日本の主要港等)、第二に、主に地方議会のコントロール下で地方政府が港湾管理者となる欧州本土の諸港湾(ハンブルク、ロッテルダム、アントワープ等)、そして第三に、港湾管理者の形態は様々(地方政府(州、市、郡)、港湾行政区を有する公営企業4、州事務組合5等)であるものの基本的には地方議会あるいは地方代表から構成される評議会のコントロール下にある北米の諸港(シアトル、ロスアンジェルス、ハンプトンローズ、ニューヨーク/ニュージャージー等)である。

なかでも欧州本土型や北米型では地元経済にもたらされる便益の最大化原理(例えば雇用創出や地元経済効果等を重視するように港湾の計画・運営を行うこと)を働かせる傾向がある。それに加えて、とりわけ東アジア、欧州大陸の諸港湾においては

 

4州、郡、市の行政から独立して管理・運営する公営企業。法的位置づけをもち、より独立性が高く、自らの権限と責任で運営される。港湾行政区内の住民に対する課税権を有する。

52つの州の協定により設立された事務組合。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION