5) CFDシミュレーションによる2次元表面効果翼の特性評価
秋元博路、久保昇三、池田仁志(鳥取大学)
空中翼の揚抗比は水面に近付くにつれて増加するが、同時に翼下面の圧力中心の移動が起こり不安定となる。この対処として、翼型後部をS字型にして翼を安定化させることが提案されている。そこで本研究では、S字翼を含む3種の翼型について2次元粘性流計算を行ない、水面近くでの特性を比較した。この結果、高キャンバ型のNACA6409翼は高揚力を示すが不安定性が強いこと、S字翼が中程度の揚力を示し静的安定であることが確認された。また極低高度でも翼上面の影響は大きく、ラム圧よりも、翼と水面の干渉として表面効果を理解する方が適切であることがわかった。

6) CFDによる肥大船の操縦運動シミュレーション
和泉一裕(東芝)、佐藤徹(東大)、宮田秀明(東大)
3自由度の船体運動方程式とCFDを連成させることにより、VLCCの操縦運動シミュレーションを行う。三船体流体力をCFDで解き、舵およびプロペラによって船体に働く流体力を実績のある数学モデルで与える。シミュレーション結果は実験値と良好な一致であった。

Time history of simulated heading rudder and drift angles(degree)for SR221A
7) 初期設計時における針路安定性の推定に関する研究
湯川和浩(船舶技研)、貴島勝郎(九大)
IMOで操縦性暫定基準A.751(18)が採択されたことを契機として、初期設計時に船の操縦性能を正確に評価することが必要不可欠となった。本論文では、細長体理論をベースに、局部的な船体形状の違いを考慮した船体流体力の理論的な推定法を提案している。さらに、船体流体力の推定結果をもとに、比較的精度良く針路安定判別を行なうことが可能であり、本計算法は、初期設計時に針路不安定現象を検討するうえで、実用的な観点から有効な手法であることを示した。

針路安定判別
8) 簡易渦モデルを用いた操縦運動中の主船体流体力の成分分離型数学モデル(その3)
―トリム時の流力モデルと前後2点支持解析法―
烏野慶、前川和義、岡野誠司(北海道大学)
これまで著者らが開発を進めてきた低速航行時の操縦性流体力数学モデルをトリム時にも適用できるよう拡張した。本数学モデルでは、これまでのように斜航特性から旋回流体力の推定が可能であることに加え、流力特性係数の解析手法を変更したことによって小斜航角範囲のデータ解析から大斜航角での流体力を推定することも可能となった。

大斜航角における斜航流体力の推定
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