第8章 総括
8.1 調査の全体実績
平成8年3月から平成10年10月まで、東京・関西両地区においてCNG車各3台、合計6台による営業走行試験(総走行距離約29万km)を行い、共同輸配送事業での試験車両の使用状況、燃料充填、運転性及び共同輸配送の実態等について調査を行うと共に、同乗走行調査による使用実態の詳細調査、アンケート調査を実施した。また一部の試験車両について排出ガス試験を行い、営業走行時における排出ガスの低公害性について調査を実施した。
調査実績を図8-1-1に示す。
さらに、これらの試験結果をもとに、この調査事例における共同輸配送事業にCNG車を導入した時の実用性、経済性、環境改善効果の検討、評価を行った。
8.2 調査のまとめ
(1) この調査事例におけるCNG車の実用性
運転者からの運転性に関する評価では、エンジンの始動性、エンジン安定性、加速性はディーゼル車とほぼ同等であった。試験期間中、運転性に関して特筆すべき指摘はなく、ディーゼル車と比較し、振動、騒音は小さく、排気ガス臭も気にならない等運転手から良い評価が得られた。従ってCNG車自体の運転性に関しては大きな問題はないと認められる。今回のような営業運行の範囲であれば性能上十分に使用可能であると評価できる。
車両に関する実用性については、燃料圧力ゲージの表示が不安定、排気ブレーキが未装備で坂道が運転しづらい、発進時にエンストしやすい等従来のディーゼル車とは異なる細部の構造部分に基づく指摘があった。実際の営業走行においても燃料系に関する車両保守を行っており、細部にわたるCNG車のさらなる品質向上が期待される。
燃料消費率、エネルギー消費率及びエネルギー消費率比については、D10・15モード(平均車速22.7km/h)での測定結果を用いてCNG車とディーゼル車で比較を行った。燃料消費率はディーゼル車7.98km/Lに対し、CNG車の平均値は6.88km/Nm3であった。従って、軽油とCNG燃料の低発熱量は異なるが、市場で使用されている燃料単位(L、Nm3)で比較すると、得られたデータの範囲では、CNG車のほうが、約14%燃費が悪いという結果が得られた。軽油とCNGの低発熱量の差を考慮して、エネルギーベースで比較すると、ディーゼル車のほうが約35%エネルギー消費率が低かった。CNG車の燃料消費率向上が課題であり、たとえば、高圧要素部品等の軽量化による車両重量低減、シリンダ内直接噴射方式、ハイブリッドシステム等さらなる革新的な技術開発が期待される。
車両使用者からの指摘事項としては、燃料充填の利便性に関するものが多かった。事業所から充填所までの距離、充填所の数、充填所の営業時間等の充実により改善される部分であり、今後のインフラ整備の増強及び充填所の営業時間の改善が望まれる。