本編
序章 調査の背景
我が国では、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(自動車NOx法)の制定以降も大都市地域における環境基準達成率は依然低い水準で横ばいを続けており、都市部での大気汚染対策は緊急かつ重要な問題となっている。窒素酸化物の発生源として大きな割合を占める自動車については、低公害・代替燃料自動車を大量普及させる施策の必要性が高まっている。
一方では、石油の可採埋蔵量は現時点では43年程度といわれ、近い将来アジア諸国の経済発展により、石油需給のバランスが崩れることが懸念されている。また、産業革命以降の急激な石油燃料の使用による二酸化炭素排出がもたらす地球温暖化を防止することも後顧の憂いを残さないためにも大変重要な課題であり、石油燃料によらない低公害・代替燃料自動車の普及が必要である。特に、現在そのエネルギーのほとんどを石油に頼っている道路輸送部門では、積極的にこれらの問題に対応していかなければならない。
自動車からの排出ガスの排出量を抑制するには、物流活動に使われている自動車を効率良く使用することで、使用台数、走行距離を減らすことが有効である。このため東京をはじめとする大都市において、今後増加すると見込まれる物流需要を満たしつつ運輸部門における環境対策を強化するために、共同輸配送システムの実施などの様々な試みがなされているところである。
こうした中、自動車メーカーによる自動車の低公害化への取り組みも強化され、近年では、トラック用ディーゼル車に代わる低公害車として、窒素酸化物等の排出量の抑制効果の大きい圧縮天然ガス(CNG)を燃料とした自動車の開発・供給が進められている。
CNG車は、平成7年12月に道路運送車両法による試験自動車としての大臣認定が解除され一般に普及される段階に至り、都市内の大気環境改善会の期待が高まっている。
そこで、運送事業におけるエネルギー効率向上、環境改善に大きな効果をもたらすシステムの一方法としての共同輸配送に、窒素酸化物等の排出量の抑制効果の高いCNG車等の低公害車を導入した環境調和型のシステムは、さらに高い環境改善効果が期待される。その実施、普及のため、荷主、運送事業者、行政等関係者の努力がなされつつあるところである。今後さらに、その導入条件、定量的な導入効果、課題の調査等によりこの共同輸配送システムの普及を図っていく必要がある。
この調査研究事業は、以上のような背景から実施されたものである。