評価は、燃料としてのエタノールの使用から発生する、潜在的な健康へのリスクと考えられている排出ガスに限定されました。選択された排出ガスはエタノール、メタノール、酢酸、ブタヂェン、エタン、プロパンおよびホルムアルデヒド、アセトアルデヒドおよびアクロレインでした。ディーゼル燃料やガソリン燃料で走行する自動車からの排気ガスに通常存在し、健康へのリスクとみなされている、いくつかの排出ガスもまた評価されました。これらのいくつかの例は、ベンゼン、多環式芳香族炭化水素(PAH)、NO2および固体物質です。
下記のリスク評価とともにモデル計算が表9.1に要約されています。要約すれば、2つの排出ガスだけがその許容濃度あるいは低リスク値を超えました。これらはブタジェンと二酸化窒素(N02)でした。しかしながら、ブタジェンの低リスク値を評価するために利用できる情報はかなり限られており、少数の動物実験が行われただけで、信頼性は高くありません。他方、二酸化窒素(NO2)の場合は、伝染病学的研究も含めて、動物と人体の両方に関しての豊富な実験データが利用できます。さらに、人体への影響が許容濃度に近い濃度で実証することができます。これは、もしNO2が許容濃度を超えたら、人の健康への影響の明らかなリスクがあることを意味しています。ブタジェンが低リスク値を超えた場合に、これが健康へのリスクとなるかについては確かではありません。
これらの結果を考慮した上で、最も重要なことは、NO2が許容濃度を超えた場合に関連するものです。著者の見解では、この評価がすべて多少信頼性に欠けるデータに基づいているという事実に注目することもまた重要と考えます。さらに、この評価は選択された13の汚染物質に基づいています。その他の汚染物質や潜在的な共同作用は考慮されていません。この研究の中で、エタノール関連の技術がディーゼルで走行するエンジンに関する技術とはまったく異なった開発の段階に到達しており、このため、これらの新しいタイプのエタノール・エンジンは将来における健康と環境にとって、かなり大きな可能性を提供するということが指摘されています。