第3章 低公害・代替燃料自動車に関する最近の技術動向
第4章で述べるように、持続可能な運輸システムの技術開発及びその構築が、地域大気汚染対策のみならず、地球温暖化防止のための重要な課題になっている。そのための技術として、昨今、高効率である燃料電池及び再生可能なエネルギーが注目されている。ここでは、燃料電池自動車、バイオ燃料に関する最近の情報を報告する。
3.1 燃料電池自動車に関する情報
燃料電池は、PEM(陽子交換膜)の技術開発により、自動車への搭載が可能になり、高効率、超低エミッションの動力源として注目されている。ダイムラーベンツ(現ダイムラークライスラー)が、2004年には燃料電池自動車を市場に投入するとの発表もあり、各社の開発が急ピッチで行われている状況である。また、ダイレクトメタノール燃料電池に関する研究も活発である。
そこで、種々のシンポジウム等の発表から、最近の燃料電池自動車に関する技術開発状況、燃料電池用燃料及びそのインフラに関する情報をまとめた。
3.1.1 燃料電池自動車の最近の進展
1998年10月にベルギーのブラッセルで行われた第15回電気自動車シンポジウムで、バラードオートモーディブは最近の自動車用燃料電池の動向に関して発表を行っている。その内容に関して以下に紹介する。
自動車用燃料電池の最近の進展
Ken Dircks
BALLARD AUTOMOTIVE INC.
9000 Glenlyon Parkway
Burnaby、B.C.Canada V5J 5J9
要約
PEM燃料電池は、将来の世代の自動車のための最もふさわしい動力源として、次第に受け入れられてきている。受け入れられている証拠として、この技術の商品化のための新しい世界的な提携の形成や、洗練された試作車を生産するにあたっての主要な自動車製造業者の参加の増加があげられる。この報告書では、燃料電池自動車に関する業務提携(以アライアンス)と多くのテスト・プロジェクトの現状について述べている。燃料問題の記述とこの分野における最近の進展が含まれている。
基本的な燃料電池
燃料電池は、燃料の中のエネルギーを燃焼することなしに、直接電気に転換する電気化学の装置である。この直接転換の結果、高い効率が得られ、汚染物質が発生しない。燃料電池は電気、熱および水を発生させるだけである。電気化学反応装置である燃料電池に使用される燃料は、純粋な形か、あるいは炭化水素改質反応により発生する水素で、反応に関して必要とされる酸素は空気として燃料電池に供給される。燃料電池の電気出力は電流により変化する電圧を持った直流電流である。