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先に述べたように、燃料の着火特性(セタン価)は低負荷の状態で最も重要となってくる。もしセタン価が低い場合、着火の遅れが増加し、着火の時期にシリンダーの中に多量の燃料が存在する。このことはほとんど爆発に近い非常に速い燃焼過程につながり、ディーゼルの場合にはまた「ノッキング」の原因となる。遅れた着火と急速な燃焼は通常、エミッションの増加と騒音を生み出す。低負荷モード12でのさまざまなテスト燃料による燃焼パラメータは図12に表示してある。この図から、着火の遅れはエタノールとセタン価の低い燃料に関して最も長いということが読み取れる。一方で、燃焼の持続時間はセタン価の低い燃料がより短い。

同じ観察結果が、燃料がセタン価向上剤の有無で互いに比較された時に見られた。一例としてECE R49のさまざまなモードにおける最大圧力上昇率と着火の遅れとの数少ない比較が図13に表示されている。セタン価改善剤を加えた燃料の方が着火の遅れがより短く、最大圧力上昇率がより早く生じる、つまり燃焼過程がより安定しなだらかであるということが明らかに見て取れる。高負荷(モード6および8)において、セタン価向上剤を加えた燃料とそうでない燃料との違いはわずかであった。

 

図11. ECE R49テスト高負荷モード6と低負荷モード12におけるVOLVO THD 103 KBエンジンでのテスト燃料の噴射の開始、5,10および50%の熱発生

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