日本財団 図書館


3.3 潤滑性

テスト燃料の潤滑性は摂氏60度においてHFRR手法(High Frequency Reciprocating Rig)を使って測定された。HFRR手法は、これに対する多くの批判があるものの、暫定的にCECにより潤滑性のための標準的な手法として承認された。実際の噴射ポンプを長時間動かすという「現実世界」の手法は極めてコストがかかり実行することが困難なため、潤滑性に関する信頼に足る研究室での手法が必要とされている。

HFRR手法は特定のタイプの潤滑性向上剤に効果を与え、他の物については過小評価するとの批判がある。これについては信頼のおけるポンプ・テストによりその添加剤が他の添加剤と同程度優れていることが証明されたにもかかわらずこうした批判がなされている。この手法は固い鉄のボールによる摩耗試験に基づいている。

このテストは荷重のかかった6mmのボール・ベアリングを固定した鉄板の上で反復運動させる単体試験装置の上で行われる。接触は大量に注がれた燃料の中で行われる。温度、負荷の頻度、ストロークの長さおよび周囲の状況等が特定され、ボール・ベアリングの表面に形成された傷のサイズが燃料の潤滑性の尺度として使用される。HFRRの潤滑性の結果はテストに使われたボールの表面の傷の直径(μm)で表わされる:この結果が低いほど潤滑性に優れているということになる。

すべてのテスト燃料の潤滑性は許容範囲であった(表2参照)。HFRRテスト手法に基づく潤滑性に関するCECの限界値は摂氏60度において450μmである。

驚くべきことに、最良の潤滑性の結果はエタノールとエステル混合燃料によるものだった。CEC燃料とエステルを含んだCEC混合燃料との比較ではとりわけ興味深い事実があった。これらの燃料はいかなる潤滑性向上剤も含んでおらず、お互い比較できるものと思われた。エステルを含んだCEC混合燃料の結果はエステルを含まないCEC燃料の結果より明らかに優れたものであった。このことから、エステルは有効な潤滑性向上剤として機能すると結論づけることができる。

潤滑性向上剤は北欧の低排出および冬季仕様のディーゼル燃料に使用されている。SCDとエタノール混合物として使用されたスウェーデン環境クラス1の燃料の両者は潤滑性添加剤を含んでいる。このようにSCDおよびエタノール燃料は期待どおりの妥当な結果を得た。エタノール混合物の潤滑性の結果は文献2の中でも報告されている値に非常に近い良好な数値であった。エタノールはディーゼル燃料の潤滑性に悪影響を与えないように思われる。もうひとつの重要な観察はRMEを含むエタノール燃料がRMEを含まないエタノール混合燃料より潤滑性に関して良好な結果となっていることである。このことは先にも述べたようにエステルが潤滑性に関して有効であることのさらなる証拠を示している。

CECとASTM2D燃料についてもまた、良好な潤滑性の結果が示された。ASTM2Dは市場規格であり、いかなる潤滑性向上剤も使用しない可能性が最も高いものである。このことからこれらの燃料の数値は他の燃料の数値より高いものであり、いずれにせよ妥当なものであることがことが理解される(400μm以下)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION