はじめに
この報告書は、日本財団の平成10年度補助事業として実施した「低公害・代替燃料自動車の普及・促進に関する国際会議への参加協力」の成果をとりまとめたものである。
我が国では、都市部を中心として窒素酸化物による大気汚染の環境基準を達成できない地域が多く、都市部での大気汚染対策は緊急かつ重要な問題となっている。また、地球的なレベルでは、産業革命以降の急激な石油燃料の使用によって排出されている二酸化炭素を主因とする地球温暖化問題が指摘されるところであり、この問題への対応も近年特に重要度を増している。また、石油の可採埋蔵量は現時点で43年程度といわれ、アジア諸国の経済発展により近い将来石油需給のバランスが崩れることが懸念されており、エネルギー資源問題の観点からも石油をはじめとする化石燃料への依存度を低下させる必要がある。石油燃料の使用による二酸化炭素排出がもたらす地球温暖化を防止し、エネルギーの安定供給確保に務めることは後顧の憂いを残さないために大変重要な課題である。
こうしたなか、自動車が窒素酸化物等の発生源として大きな割合を占め、運輸部門の二酸化炭素排出割合が20%にのぼる我が国でも、地域及び地球レベルの環境負荷を低減し、利用エネルギーの多様化に道を開くような低公害・代替燃料自動車等の導入による持続可能な運輸システムの構築が強く望まれている。
大気環境保全、エネルギー資源の課題に応えるために、1974年11月に経済開発協力会議(OECD)理事会の決定により、国際エネルギー機関(IEA)が、設立された。運輸低公害車普及機構は、大気環境保全やエネルギー問題に積極的に対応すべく、IEAのエネルギー研究技術委員会下の「自動車用先進燃料研究開発実施協定」及び「ハイブリッド・電気自動車技術・計画に関する協力についての実施協定」に、日本政府指定機関として参加し、これらのIEAの活動を通して低公害・代替燃料自動車普及促進に係る国際協力を行ってきた。
運輸部門は、今後エネルギー消費量の増加が予想されており、IEAでは、どのように持続可能な運輸システムの構築を行っていくかが大きな焦点になっている。
運輸低公害車普及機構は、これらのIEAの活動を通して地域・地球環境問題およびエネルギー問題の解決に向けて微力ながら、貢献できたと考えている。また、これらの問題の解決は一人一人の具体的行動から始まる。IEAの活動で得られた世界の動きに関する情報が、国内において良い波紋となり、市民レベルの意識の高まりへつながることを期待したい。
平成11年3月
財団法人物流技術センター
会長 細田吉蔵
運輸低公害車普及機構
所長 景山 久