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6)現金給付について:

「現金給付が介護保険のシステムと財政をささえている。現物給付より現金給付を選ぶ者が多く約70%だが、もしこれらの者全員が現物給付を選ぶことになれば、現在の在宅介護サービス機関の数ではやっていけない。ハンブルグ市のように現在は「過剰提供」といわれている市や州においても足りなくなるだろう(ちなみに、ハンブルグ市の民間営利運営体と公的非営利運営体の比率は約8:2とされているが、消費者センターの情報によると、この両者の間には『質』の差はない)。家庭にいる介護者が毎月受け取る給付で、時には近所の人に介護を頼んだり、時にはプ口の力を借りたりするのが良い、というのがそもそもの考えであった。」

<州レベル、主要政党の評価>

また、連邦の正式見解以外の反響はどうであるかというと、例えば、中央の労働社会省は1998年9月27日の総選挙まで16年間、保守党与党連立(CDU/CSU/ADP)の陣営であったが、保守勢力だけで政権を握っている三つの州(バーデン・ブュルテンベルグ州、バイエルン州、ザクセン州)は中央の労働省と同じく、1998年8月の時点で、介護保険の導入経過をほとんど批判なしに肯定的に評価している。

1990年、今回の日本の介護保険の構想に似た草案を提出したバーデン・ブュルテンベルグ州は、積立方式と年齢制限の擁護者であったが、現在の介護保険の責任者であるシュモルツ氏は次のように述べている。「この3年間、経済的諸問題があったにもかかわらず、介護保険はうまくいった。当面、積立方式を考えるのは現実的ではないだろう。また、65歳以下で給付を受けている者は全給付者の1/4以下なので、年齢制限は将来も必要ではないだろう。」

しかし、ドイツのその他の13州においては、強き野党であったSPDが単独政権または連立政権を握っていた。このSPDが主導をとっていた連邦参議会は介護保険に関する第一次報告を1998年5月末に発表している。これは前述の国レベルの報告に対する州レベルからの評価と批判と見てよい。しかし、この中には介護保険そのものに対する原則的な批判は見あたらず、報告が十分に検討しなかった点、見のがした点などを指摘、列挙しているに止まっている。

その幾つかを紹介すると:

―介護保険に係わっていた行政上の他のアクターの活動が報告されていない。

―批判的分析に欠けている。

―リハビリ優先原則がはっきり示されていない。

―ショート・ステーと訪問看護の関係がはっきりしていない。

―治療介護の分析が欠如している。

―将来の保険料徴収の予測が不十分である。

などの点がある。

 

 

 

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