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6)積立方式が良いとする者も、これまでの賦課方式から積立方式への移行が容易ではないことを知っている。これは数十年という期間を有するため、制度移行の過渡期の世代と将来の世代とに分けて対策を練る必要もある。例えば上述の「基礎年金」では、過渡期の世代が一番損をすることとなるため、是正する措置が導入されねばならないと同時に、その間の補填的追加支援策が、自由選択を基に講じる必要があることも考えねばならない。(Breyer参照)

 

以上、いくつかの改革案を紹介したが、現在、実行可能と思われる提案が連邦経済省の経済審議会から出されている。これは、被用者にその年金保険料に加えて、所得の4%の積立金を義務付けるというものである。それが恩給基金、投資基金、生命保険などどの形をとるかは自由選択となる(Handelsblatt,1998.頁30参照)。この提案は、ドイツの将来の年金政策は「労働」という生産要因(賦課方式)にも「資本」という生産要因(積立方式)にも片寄らないものとなり、老後保障の「三本立てのシステム」(資金、保険、税)が保たれることとなり、一つの妥協案と考えられている。

この他にも幾つかの提案もあり、就業年数の延長等を図る案もあるが、現状の高い失業率などもあって、今のところあまり真剣には討論されていない。なお、年金を合め高齢者の他の収入源に対する課税も検討せよという案もある。またさらに、遺族年金は働いたことのない者に対しても配偶者の税抜き所得の60%を支給しているため、高齢女性の社会扶助(生活扶助)との関係が課題になったり(Der Spiegel,Nr.20,1998)、子供のいない夫婦の年金保険料の増加を提案したり(CDU、Handelsblatt,1998.)、年金をめぐる改革論議は総論、各論で絶えることがない。

 

3 公的医療保険

 

3.1 現状と課題

 

ドイツの医療保険制度は、高齢化等人口構造変化のほかに、医療技術の発達や医療提供システムなどによる影響を受けているが、ここでは高齢化社会に係わる現状と課題に注目し紹介することにする。

現在、公的医療の保険料率は労使折半で税込み所得の12%である。保険料の算定限度は1997年度で、旧西ドイツにおいては6,150マルクだが、旧東ドイツではこれよりやや低い。図表22-1は毎年増大する医療費の様子を示しており、図表22-2はドイツにおける医師の数の増加を表している。

 

 

 

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