2.2 制度改革をめぐって
保険料率の上昇をくいとめる対策として次のような改革案が論じられている。
1)税制資金調達による最小限の年金を保障せよという意見が(左派の政党から)ある。 しかし、ドイツでは退職してから社会扶助を頼りにしている高齢者が少ないことから、現在のところ必要がないと一般に思われている(Der Spiegel,Nr.20,1998)。
2)すべての被用者に対して公的保険を義務づけようという提案がある。自営業者や保険料算定限度以上の収入のあるものは公的年金保険の枠組に入ってもらおうというのである。 しかし、これは官民間の自由選択肢の幅が狭まることと、おそらく料率を下げるという根本的解決にはならないことが挙げられている。
3)税制資金調達による国家加算額の20%の割合を増加せよという声がある。確かに、税による援助はヨーロッパの他の国でも低いが、職良年金保険が導入された1912年当時においてはの援助があったことを考えれば、増加してもおかしくはないが、そもそも税による援助がなければならないこと事態が、年金保険制度そのものが保険料のみではささえきれないことを証明しているようである。
4)基礎年金とともに挙げられた提案として、年金給付額を減少せよというのがある。公的年金保険に規定されている以上の給付を望むものは他の―道例えば前もって個人的配慮による企業内や企業外の恩給基金、または生命保険などの―を選べというものである。そのためには、所得税減額などの対策で補填せよという考え方である。これは最近、国として重要な社会福祉の分野から手を引いた「オランダ・モデル」に基づいていると見られる。
5)銀行、有価証券、また企業などの利益代表者は賦課方式を断念して資本積立方式に移行するように力説する。今までの高齢者の収入の1/4は企業年金や生命保険などの積立方式による資金調達を通してであった。これをさらに増加し、同時に公的年金保険のリストラを計るべきだというのである。両者の混合のみが将来性を有すると見られており、民間保険を助成する包括的な国家促進対策が必要といわれ(Der Spiegel,Nr.20,1998参照)、「チリ・モデル」も話題に上がっている(Han-delsblatt,1998,6.22,頁33参照)。しかし、これらの提案に対して反対意見もあり、思給基金のリスクを示すもの(同上参照)や「アメリカ・モデル」にならった積立方式は経済全体の構造を改革させる原因にはならないとも言われている(H-an-delsblatt,1998,5.25,頁2)。