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は じ め に

 

今年1999年は、国連決議による「国際高齢者年」である。

これに伴い国連が提唱している「高齢者に関する原則」等を見ると、主に恵まれない状況にある高齢者の基本的人権の尊重が強調されている感がある。しかし、高齢者年のスローガンとして掲げている「総ての世代の社会のため」という趣旨は、高齢化によって増大している社会保障、福祉財政の在り方に苦慮している先進諸国も賛同でき、「国際高齢者年」を好い機会と受けとめていると思われる。

私見で恐縮ではあるが、我が国の福祉財政については、「福祉元年」と称された時代の財政当局責任者の一人として関わったことから、福祉の重要性を知るとともに、福祉財政の持つ特性、また遠からず人口構造も急速に高齢化することを考えると、福祉財政すなわち国民の負担が耐えがたい時代がいずれ来ると考えていた。そしてその後部分的に制度の改正等は行われたものの、今日における我が国の福祉財政は周知のような状況に到っている。

我が国同様に高齢化が進み、とくに福祉先進国といわれた各国の状況はどうなのか、例えば、我が国の福祉思想に大きな影響を与えたイギリス(ベバリッヂ報告)の福祉施策がサッチャー改革等でどのように変わったのか、また、福祉国家スウェーデンでもいろいろと改革が行われ、ドイツでは公的介護保険制度について連邦政府から「第1次報告書」も出されたと聞く。

このような経緯から、我が国の福祉財政の現状そして今後について考えるため、「高齢化先進国の福祉財政の研究」を行うことについて、私は当センターの役員等に図ったところ全員が賛意を表し、まさに満場の一致を得た。

そしてさらに、幸いなことに、この研究については日本財団の補助を得て実施できることとなり、前年度の概要調査研究からスタートしているところである。

また、この研究に当たっては専門権威の協力が必要なため、福祉財政とくに年金制度について究明し、幾つかの改革案も提示しておられる高山憲之教授(一橋大学経済研究所)にご尽力を依頼したところ、ご快諾下され、高山教授を中心に各国の専門家等の協力も得て、この研究をすすめるはこびとなった。

ここに、上梓する報告書(中間報告)第I部は前年度の高山教授のレポートを、第II部はドイツ研究をお願いしたボーフム・ルール大学政治学助教授の濱口・クレナー牧子氏(Priv.-Doz.Dr.phil)の研究報告「ドイツにおける年金保険制度・医療保険制度・介護保険制度の最近の動向」を収録したものである。

高山、濱口両先生に厚く感謝申し上げる次第です。

 

1999年3月

社団法人

エイジング総合研究センター

理事長 高木文雄

 

 

 

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