日本財団 図書館


7. 今後の動向

 

(1) ヨーロッパ共通通貨による新しい「競争」による給付の平均化

ヨーロッパにおける通貨統一が進めば、物価、賃金だけでなく、社会保障給付についても統一化や近似化が進むと考えられている。現在は異なる国家間の社会保障システムが互いの良いところどりで、現実に合ったシステムに変わっていくことが予想される。従って、長期的には、税制度と同様に、「ヨーロッパ水準」が生まれて給付水準なども平均化されるのではないかと多くの関係者は予想している。

 

(2) 少子化の進行と高齢女性の増大

現在の社会の「給付能力」とは直接関係ないともいえるが、将来の問題として多くの先進国の悩みは少子化の進行である。ドイツでは、1997年の末から約半年のわずかな間、ベビー・ブームの到来かと思われた時もあったが、間もなく出生値は元に戻ってしまった。図表18は1995年までの出産動向を示している。とりわけ旧東ドイツの出産率が極めて低く、現状の出生動向を見るかぎり、今後20-30年後の高齢社会がピークに達した時、現行のような社会保障システムでは成り立たず、年金支給等に支障をきたすこととなる。

また、ドイツは日本と同様かそれ以上に女性が働きにくい社会環境であるともいえる。図表19が示すように、就労している女性は子供のいない者が多い。また、注目すべきは、60-64歳で働いている女性は子持ちの女性群であり、子の無い女性の数を上回っているが、これは収入が足りないからだと言われている。しかしながら、現状では、65歳を越えて社会扶助(生活扶助)を受けている高齢者はドイツでは少なく、5%以下である(図表20参照)。(Die Zeit, 1998. 5. 7, 頁33)。今後、高齢女性とりわけ後期高齢女性が増加すれば状況は少し変わってくるかもしれないが、イギリスの40%にも昇るとは考えにくい。(図表21は2030年までの「女性の余剰」の傾向を表している)。こうした高齢女性の状況については、配偶者が亡くなった場合、配偶者の税抜き所得の約60%を年金として受給する者が多く、自分自身が働いた所得に対する年金を選ばない者が多いからであろうとみられている。(図表22参照)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION