県コミューンやコミューンの、地方自治体の主な財源は、地方所得税、国の補助金、手数料、借入金などであるが、一番大きいのは地方所得税で、財源の40〜70%を占める(図9)。地方自治体への国の交付金制度の目的とするところは、地方行政への一般的な財政援助のほか、地方自治体間の格差を是正することにあるがごくわずかである。コミューンは、予算の50%以上を社会福祉と教育(義務教育および高等学校教育)に支出しており、県コミューンは、平均して80%の予算を保健・医療サービスと精神障害者対策に支出しているといえよう。国の歳入項目としても、主たるものは租税収入である。租税収入の最も大きな位置を占めているのが、消費課税のなかでも一般消費税、つまり付加価値税(1997年最高25%、しかし食料品やホテル12%、新聞や映画・コンサートなどの入場料6%というように異る)である。スウェーデンでは、法定の社会保険料は、法律に基づいて基本的に雇用主や自営業者によって負担される。この上に労使協約による社会保険料が積み重ねられるので、雇用主の負担は一人の被雇用者に対して名目賃金の約40%(1998)にのぼるが、これらは一種の雇用税として国の収入となる。その代わり、国の歳出も、国民基礎年金や、児童手当金、そしてまた医療保険や失業保険に対する、国庫補助金などの社会保障分野が、大きな割合を占めている。
高福祉高負担がどう受けとめられているかといえば、一般の人々は、国や地方自治体への所得税を払えば、年金や社会保険料金の追加負担もなく、また老後のために貯金する必要もなく、安心して暮らせるという『保障への前提』として考えていると言えよう。そのかわり、支払った税金が何に、どのように使われるかということに対しては関心が非常に高い。医療サービス、高齢者ケア、学校教育、雇用政策の公的負担の減少を希望する人は極めて少なく、特に高齢者ケアに対する公的負担の支持率は90年代に入って著しく上昇している(Svallfors・1997)。
スウェーデンの社会保険は世代間ならびに国民グループ間の再分配をはかるところから「連帯的保険」と呼ばれ世代間の助け合いを基礎とする(参考図)。個人のレベルでは、さまざまな人生サイクルにおける所得の再分配を意味する。