さまざまな理由(高齢、障害、疾病など)により、自らの就業所得によって、生活の営めない人々に対しては、国を介して、就業人口から非就業人口への所得再分配が行なわれる。これらがすなわち、医療保険、国民年金などの社会保険を中心とする社会保障制度である。社会民主党の成功は、給付対象を労働者階級だけでなく、中流階級を基礎にして、すべての国民を対象とした、包括的福祉国家を形成したところにある(Esping-Andersen,1990)。給付方法は一律額給付(児童手当金、国民基礎年金)、所得比例給付(傷病休暇手当金、国民付加年金)と所得状態に伴う、ニーズ認定を必要とする給付(住宅手当金)の、三つに分かれているのが、スウェーデンの給付特徴である。つまり、普遍的・包括的供給原則に付加と補助の制度が加わる。「中流階級」型福祉国家への移行を決定的なものにしたのは、1960年の所得比例給付を原則とする国民付加年金の導入によってであった。
イギリスなどによって代表される基礎保障型国家は、社会保障制度によって、国民が一定の生活レベルから脱落することを防ぐ、最低限保障のシステムをとる。それに対して、スウェーデンなどが代表する北欧型福祉国家は、最低限保障では満足せず、すべての国民の、より高い生活水準(スタンダード保障)を目指して、所得再分配政策により、出来るかぎりの機会平等をはかろうとするものである。つまり、福祉国家では福祉は「社会的市民権」あるいは「市民の権利」として位置付けられている。したがって、「受給者」とか「貧困者」の『刻印を押さない社会』である。福祉国家スウェーデンの掲げる政治の理念と主導価値として代表される六つのそれは、平等、自由、民主主義、連帯、生活の安全、公正であり、それらを実現する前提として平和と経済発展を追求されてきた。基本的には資本主義国でありながら、さまざまな不穏から社会を守り、限りなき平等社会の実現を目指し、政治の努力が行なわれてきたといえる。