1980年と比べると幾分低下したもののスウェーデンの女性の就業率は78%(1997)と世界一高く(1990年は83%、1989年は85%)、経済的に自立した生活を可能にしていることも、女性の、扶養家族としての依存を減らしてきている。また、9年間の義務教育を終えると、原則的に子供は家を離れて自立していく。したがって、単身世帯も増えており(40%)、先に述べたように一人住まいの高齢者も高齢化に伴って90年代倍増することが予想されている。このことは社会にとって、ケア・ニーズの増加を意味する。ただひとつ指摘されるのは、子供に依存しない高齢者の独立した生活が家族間の断絶を招いているかというとそうではない。
国際的に比較してみてもスウェーデン人の家族交流度が高いことはいろいろな調査で明らかにされている。人口問題においてスウェーデンが他の工業先進諸国と異にすることは、相対的に高い出生率を維持してきたことである。1992年の平均出生率は女性1人につき2,1であった。出産率の最も高い年令層は、スウェーデン女性では30〜40歳代と比較的遅い。高出生率を導いた要因を正確に分析することは難しいが、一連の男女平等政策、両親保険を中心とする有給育児休暇制度などの社会政策の拡充が重要な背景として指摘されよう。
しかし、90年代初めの経済的不況や失業率の上昇による生活不安に加えて、初子出産年齢の高齢化(生み控え)が引き続き、しかも出生率をさらに高める新しい要因がみられないことなどから、出生率が著しく低下した。ただし、出生率の低下がみられるのは、低学歴、低所得女性グループにおいてであって、高学歴、高所得女性の出生率には変化はみられない。低下傾向は今しばらく続くと予測されるが、スウェーデン人の家族形成や理想の子ども数(2人)などに対する価値観には変化がみられないことから、回復することが予想されることも確かである。99年の人口予測では、回復傾向の兆しがみられるという指摘が既になされている(Svenska Dagbladet・1998-12-30)。