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(1)政策目標

現在の福祉システムは、中・低所得高齢者階層の養護費用しか負担しておらず、高齢者全般の介護サービスと財政需要に関しては妥当な企画を立てていない。我が国の長期介護政策に対する考え方はかなりたち遅れており、まだ「救済」時代のイメージにとどまっているから、積極的な目標があるとはいえない。近年、政府関連機関は長期介護の必要性を認識し始めたが、残念なことに、長期介護の目標について、まだ明確な討論には至っていない。

一方、欧米先進諸国の場合、最初は貧困救済から始まったが、1950年代以来3回の改革を経て現在に至っている。まず、人口老化と長期介護需要が大量に増加するという衝撃を受け、消極的な救貧政策を放棄し、施設サービスによって、高齢者の長期介護に対する普遍的ニーズに対応していた。その後、高齢者の教育や経済水準の上昇・生活に対する自主性への追求・重視等によって、施設ケアモデムに反感を持つようになった。1960年代に入ると、北欧諸国は長期介護の目標を再び変更した。長期介護の目的は、高齢者の心身機能を増進・維持し、在宅で生活できる能力を強化することによって、高齢者の正常な生活を延長させることである。この目標は高齢者のコミュニティでの生活を支援するから、在宅サービスが盛んになった。現在多くの先進国はこの政策目標を採用している。しかし、近年人口高齢化によって、介護のニーズが増えたが、経済不況のなか、いかに効率性をもってコストを下げるかは1990年代以降の介護政策改革の重点となっている。

今日、我が国では政府は人口高齢化のスピードの速さをようやく認識し、長期介護資源の発展を進めるように始まっている。例えば、内政部は養護用のべッドを特別養護用のべッドに変更し、衛生署は病院のナーシングホームの建設を奨励し、公立病院のべッドを長期介護に変更するよう対応策を出した。しかし、以上の対策は我が国の長期介護に対する総合的な目標を明確にしていなかった。長期介護システムの発展には、まず政策目標に対する合意を得てからこそ、適切なシステムを構築することができよう。我が国では、長期介護政策を企画するとき、まず目標から立てなければならない。先進諸国の政策目標の発展過程を参考にし、施設サービスを大量建設の段階を超えて、ケアに対して積極的な態度をもち、高齢者の心身発展の促進と、高齢者の正常な生活を維持するような政策目標によって、これからの長期介護のニーズに満ちて、高齢者の生活の質を高めることができよう。

 

 

 

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