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韓国における都市の人口高齢化

 

崔 仁鉉(韓国人口学会理事)

 

1. 人口変動と高齢化

 

朝鮮半島における人口構造の変動は20世紀とともに始まった。まず、1910〜1945年にいたるまでの約30年間を見てみると、死亡率(CDR)は人口千人当たり30から15までに減少、その後も減少し続けている。一方、出生率(CBR)の方は人口千人当たり40の水準であまり変動が見られない。

このような出生率と死亡率における格差は、その幅が大きくなるにつれ人口の急激な自然増加を招く要因となった。さらに、人口構造の内部を撹乱させることになる人口流出も社会現象として生じたのである。1940年当時、朝鮮半島の総人口2,600万人のうち10%にあたる約260万人が中国大陸(満州地方に150万人)または日本(110万人)などへ海外移住したと分析されている(Kim,Y.,1966)。

20世紀の半ば(1945〜60)にあたる15年間、朝鮮半島においては政治、社会、経済的に不安定な状況が続くなかでの激変が見られる。1945年の朝鮮半島の開放、1948年には、国土分離による韓国(朝鮮半島の南側)だけでの政府成立、そして1950〜53年の朝鮮戦争へと続く。その結果、1955年の韓国人口2,150万人のうち約200万人が帰還者または避難民となっており、事実上韓国における人口の社会的増加を招くようになったのである(Choe,E.H.,1987)。

朝鮮戦争以後の政治的不安定が見られるなかで、1961年の軍事政権の誕生とともに始まった経済開発5ヵ年計画の継続的な実施を軸として輸出主導の著しい経済成長を成し遂げるようになる。さらに、政府は、国民を強力な人口抑制政策(Anti‐natal Policy)へと導き、合計特殊出生率(TFR)は、1960年代の6.0から1984年には2.1へと、人口置き換え水準(Replacement Level)にいたり、1990年代には人口置き換え水準以下である1.7のレベルで落ち着き、その後あまり変動が見られないのが現状である。

 

 

 

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