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(4)移動後の社会活動に影響を及ぼす要因

 

上記の結果より、いずれの者も移動後に社会活動をしている者の割合が減少し、特に転入者でその傾向が強いこと、転入者は移動前に活動していたが移動後には活動していない者が多いこと、転出者も移動前に活動していたが移動後には活動していない者が多いが、移動前に活動していなかったが移動後には活動している者も多いため、全体としては活動している者の減少の程度は大きくないことが示された。

表2-28に、移動前と移動後の社会活動について、「なし」を0点、「あり」を1点として、移動前後の間の順位相関係数を者別に示した。これは移動前後で社会活動の状況が変化していないか、つまり移動前に活動していた者は移動後にも活動しているか、あるいは移動前に活動していなかった者は移動後にも活動していないか、の程度を表す指標である。社会参加、奉仕活動、学習活動、個人的活動ともに、転出者、転入者は市内転居者と比較して順位相関係数が低く、社会活動の状況が移動前後で変化していることが示された。

 

表2-28 移動前と移動後の社会活動の間の順位相関係数

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以上の結果から、転入者、転出者における社会参加、奉仕活動の減少は明らかであることが示された。居住移動した高齢者は新しい地域での友人や仲間が少なく、社会活動を実施するのが困難な状況にあると考えられる。しかし社会活動の減少は居宅内への引きこもりから健康状態の悪化を誘発する可能性がある。したがって、居住移動した高齢者に対しては自治会や老人クラブへの入会を勧め、また自治会や老人クラブに対しては新しく転入してきた高齢者に関する情報を提供することによって、居住移動後の仲間づくりを促進していく必要があると考えられる。

社会活動と健康状態との関連で、市内転居者は活動していない者の日常生活能力が高いことが示された。これは、社会活動を実施する能力があるにも関わらず、何らかの理由で実施していない者が多いことを示している。健康状態の悪化を予防するための手段の一つとして、このような高齢者に対しても社会活動を促進するような施策が必要であると考えられる。

 

 

 

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