日本財団 図書館


(6) 漂流

 漂流中は、精神的にかなりの負担を強いられます。特に、海上模様の悪化や夜間の漂流は、恐怖心・絶望感・虚脱感に襲われ、最後に生きる望みを失ってしまうことがあります。そのためには、集団行動(団結力)と強い精神力を維持することが大切です。

 ?集団行動をとる

 脱出後、船長または船長に代わって指揮をとる者は、乗組員を出来るだけ早く一箇所に集合させます。夜間の場合、お互いに声を掛け合ったり、灯火で集合位置を知らせます。

 ?補助的救命具の活用

 事前に投下した補助的救命具を、バラバラにならないようロープで結び、すがり付き用具等に利用し漂流者の離散を防止します。

 ?体力の維持

 水中での運動(泳ぐ等)は、体力の消耗と体温低下を招きます。陸岸等に泳ぎ着く可能性が無い場合は、救助されるまでの必要以外の運動は控えます。

 ?漂流中の姿勢

 体熱の放出を防止するため、可能な限り身体を丸め、身体の表面積を小さくする工夫をして下さい。海中では両肘を両脇腹につけ、腕は胸の前で救命胴衣を抱えるように組みます。複数の場合は、お互いに抱き合う姿勢で体熱の放出を防ぎます。
 救命胴衣を着用していない時は、仰向けになり手足をゆっくり動かし、浮くために必要な最小限度の運動量とします。立ち泳ぎは、運動量が多く体力を消耗します。補助的救命具や漂流物を利用して下さい。

 ?携行物品の有効利用等

 遭難信号類の使用時期及び食料等の配付について、携行者に指示徹底させます。

 ?着衣の確認

 救命胴衣及び着衣を定期的に点検し、露出部や乱れを整え、体温低下防止に努めます。厚着は水中でも有効です。支障のない限り脱がないようにします。

 ?体調等の把握

 指揮者(船長又は船長に代わる者)は、漂流中絶えず乗組員の肉体疲労度や精神状態に気を配り、精神的なよりどころになる事が必要です。

 ?その他の留意事項

 アルコールの飲用は、神経に作用し、寒さに対する抵抗力を低下させると共に水分の排泄を促し渇きを増すと言われております。また、アルコールは血管を開き身体の末梢まで血液が循環するため、身体表面でヒヤされた血液により体温低下を促進します。煙草についても、喉の渇きを増大させる作用があり、漂流中の喫煙は避けます。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION