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高齢者の歩行能力に関する体力的・動作学的研究(第2報)−膝伸展,足底屈,足背屈の筋力と歩行能力の関係−


 歩行は高齢者にとって,快適な生活を送り,有意義な社会的活動を行う上で必要不可欠な運動である.歩行速度や歩幅は60歳以降に低下する8)ことが知られているが,その原因の一つが下肢筋力の低下にあると考えられる.
 膝伸筋力については,加齢に伴う直線的な低下14),50歳代からの低下10)が報告されている.足底屈力については,高齢群(60-81歳)が若年群(26-45歳)より有意に低い5),50歳代から低下する4),20歳代から50歳代まで有意差がみられない13)などの報告がある.また,足背屈力についても40歳代以後の明らかな低下工8),20歳から58歳までは年齢との相関がない13)が,19歳から67歳までの被験者では年齢との相関がある12)などの報告がされている.
 歩行動作に関しては,キック終了時の股関節,膝関節,足関節の伸展角が加齢とともに小さくなるとの報告8)があり,その原因も筋力の低下に関係しているのではないかと考えられる.Whippleら16)は,転倒の経験がある者はない者より,膝関節の伸展,屈曲トルクと足関節の底屈,背屈トルクがいずれも低いと報告している.伊東ら7)は,22歳から79歳の男性81名について10mの最大速度歩行と膝伸展トルクの測定を行い,歩行速度と歩幅の低下要因の一つに膝伸展力の低下があげられると報告している.一方,歩行中の力学的分析としては,植松と金子15),が高齢女性13名と若年女性6名について自由歩行における下肢関節トルクを測定し,膝伸展トルクと足底屈トルクが歩行速度と相関が見られたと報告しており,Crowinshield1)は歩行中の股関節トルクが速度の増加とともに増加すると報告している.しかしながら,加齢に伴う膝関節,足関節の筋力と歩行能力との関係を総合的に検討した研究は見あたらない.本研究では,40歳代から80歳代の女性を対象として膝関節の伸展力,足関節の底屈力と背屈力を測定し,歩行速度,歩幅,歩調との関係を通して,歩行速度や歩幅の低下要因を明らかにしょうとした.


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