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高齢者における継続的な運動・スポーツが体力および情緒・行動面に及ぼす影響
−運動クラブに所属する高齢者の4年後の追跡調査−


 3.調査内容
 1)体力
 体力は客観的尺度と主観的尺度で評価した.客観的な体力評価には,従来から用いている体力診断バッテリーテスト5〜7),すなわち閉眼片足立ち(平衡性),座位ステッピング(敏捷性,以下ステッピングと略す),長座位体前屈(柔軟性,以下体前屈と略す),垂直とび(瞬発力),握力(筋力),息こらえ(耐久力)の6項目を基本に,開眼片足立ち4)(平衡性),シャトル・スタミナ・ウォークテスト3)(持久力,以下SSTwと略す)およびバッテリーテスト総合点を加えた計9項目を尺度とした.これらの体カテストの方法についてはすでに報告3〜7)しているので,詳細はこれに譲る.
 一方,主観的な体力は,明治生命体力医学研究所が開発した身体活動能力評価表2?(簡易自己体力評価法)によって評価した.これは,身体活動能力を筋力系・持久系の各10項目,計20項目の動作に対して「できる」(1点),「できない」(0点)で評価するもので,得点が高いほど主観的体力に優れる.
 2)生活状況
 現在の生活状況として,健康状態,身体活動状況(散歩の時間,外に出る時間など),健康づくりへの心がけ,運動クラブの継続理由や継続による心身の変化等について,質問紙を作成し,調査した.
 3)情緒
 情緒面は,すでに標準化されているGeriatric Depression Scale(GDS)簡易版11,21)を用いて評価した.これは,元来,欝病患者の欝状態を評価するために開発されたものであるが,地域住民の情緒評価にも広く用いられている11).GDS簡易版は,15の質問項目で構成され,過去1週間くらいの気持ちを「はい」「いいえ」で評価するもので,5〜9点が軽度の欝状態,10点以上が高度の鬱状態とされる.
 なお,質問紙による調査(生活状況,主観的体力,情緒等)は,調査時に趣旨および記入方法を説明した上で直接手渡し,自己記入してもらい,記入漏れのないことを確認の上,回収した.

 4.統計処理
 健康感や身体活動状況等の計数データは,男女別に対象者数に対する回答者数の割合で表した.体力やGDS得点等の計量データは,男女別に平均値とSDを算出し,平成6年と平成10年の平均値の差は対応のあるt-testを用いて検定した.また項目間の関連は,性,年齢を制御した偏相関係数を用い,有意性の検定は両側検定によった.



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