日本財団 図書館


 発育期においては,特別なトレーニングを実施しなくても筋は太くなり,その出力を増す.しかしながら,体力および運動能力の年代推移に関する報告14,21)によれば,近年における中・高校生は体力および運動能力とも低下傾向にある.なかでも加賀谷および吉田14)は,特筆する事項として,1990年以降,高校期における握力の著しい低下を挙げている.年代推移に伴う体力の低下は,1971年に猪飼13)がすでに報告していることであるが,加賀谷および吉田によれば,当時指摘された背筋力の低下は現在にかけてさらに進行しているといわれている.
 筋力トレーニングの効果に関する近年の研究結果は,思春期前10)および中・高年齢期8,9,27)においても青年期と同様な変化,すなわち,筋の肥大と筋力の増大が可能であることを示している.このことは,換言すれば,先に挙げた年代推移に伴う筋力の低下は,現代における青少年の身体活動の実施状況として,筋の発達を促すに足りる運動刺激の不足を意味するものに他ならない.しかしながら,現代の青少年が置かれている生活環境を顧みるに,部のスポーツエリートを除き,一般の児童生徒が筋の形態と機能に身体の自然発育に上乗せする形での発達を獲得する機会は,体育実技を除けば運動部活動に参加する以外に手立てはないといっても過言ではなかろう.
 発育期におけるスポーツ活動への参加が筋の形態と機能の両面に及ぼす影響については,これまでのところスポーツ選手を対象にした研究がいくつかなされている22).それらの結果によると,中学生期から高校生期にかけて,種目の特性を反映した筋の形態と機能の発達が生じる.しかし,測定の対象となった選手の多くはわが国のジュニアスポーツ界を代表する者である.それゆえ,それらの結果は,特定のスポーツ活動の継続によって生じるであろう筋の特異的な発達を知るうえで有用な情報となり得るが,運動の質および量の点から判断して,課外活動の領域内でスポーツ活動に参加している者に当てはまるかどうかは疑問である.本研究では,運動部活動としてサッカー部に所属する高校生を対象に,筋厚,筋力,および間欠的全力走時の発揮パワーを測定し,発育期における特定のスポーツ活動への参加が筋の形態と機能およびパワーの持続性に及ぼす影響について検討することを目的とした.

Table 1. Physical charecteristics of subjects : mean±SE



前ページ    目次へ    次ページ