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中学生女子バレーボール部員の部活動への意識と部員−顧問間の相互理解度との関連


 学校の運動部活動は,生徒の心身の健全な発達にとって大きな貢献をしてきているが,これからの学校教育においても,?喜びと生きがいの場の 提供,?生涯にわたってスポーツに親しむための基礎づくり,?体力の向上と健康の増進,?自主性,協調性,責任感,連帯感等の育成,?仲間や教師 との密接なふれあいの場の提供などさらに重要な役割を果たしていくことが期待されている(文部省1)).また,これからの学校体育のあり方につ いては,「心と体を一体として」(文部省2))心身の調和を重視した学習支援が示されており,学校教育の一環である運動部活動にもこの方向に沿 った運営・指導が求められている.
 これまでにも,運動部活動を競技能力や体力の側面ばかりでなく,部員の運動部への意識や意欲,さらには将来のスポーツ継続の視点も加えてとら えようとする試みも行われてきており(青木,松本3),金崎,橋本4)など),また,運動部活動における包括的な社会的・心理的側面でのサポートやケ アの重要性が報告されてきている(土屋,中込5)).
 落合6,7)および落合たち8)は,学校運動部に対する部員の意識に着目し,運動部に対する積極的な意識が将来のスポーツ参加に望ましい影響を与 えることを明らかにしている.さらに,部員の心身両面にわたる発達を願う顧問にとっては,部員の心理的側面での特徴をフィードバックすること が大切であるとの観点から,1つの中学校運動部を事例的に取り上げ,部員の部活動そのものやチームヘの意識や競技意欲,個々の部員のパーソナ リティの特徴などを顧問に伝え,説明するという方法でフィードバックの有効性の確認を試み,一定の効果を確認している(落合たち9)).
 そこでは,部活動指導における部員と顧問との相互理解も,運動部指導において配慮すべき要因であるとの立場から,相互理解の程度の測定も行わ れ,それらを含めた学年別分析から次のような傾向が見いだされている.?部員の部活動に対する意識や競技意欲は,2年生より1年生の方が積極的 なものとなっていた.?相互理解に対する主観的評価は,部員の主観的評価,顧問の主観的評価ともに学年が進むにつれて増大していた.?部員の主 観的評価と顧問の主観的評価との差(ずれ)は,学年が進むにつれて,顧問の主観的評価がより大きくなる方向で増大していた.
 本研究の目的は,部員と顧問との相互理解の程度と運動部員の意識や競技意欲との関連に着目し,その関連を明らかにするとともに,前報における 部活動への意識や競技意欲,部員顧問間の相互理解での学年差が一般的なものであるかどうかを確かめようとするものである.

 研究方法
 1.調査期間
 平成10年5月21日〜6月10日
 2.調査対象
 神奈川県内の中学校9校の女子バレーボール部員並びにその顧問
 女子162名
 部顧問教師9名
 3.調査内容
 1)部員へのTSMI(Taikyo Sport Motivation Inventory)注1)
 部員の競技意欲を診断的に把握するためにTSMI(日本体育協会作成競技意欲テスト)を実施した.
 2)部員の部活動への意識調査対象部員が運動部活動に関してどのような意識を持っているかを明らかにするために質問紙法による意識調査を 行った.調査項目は表1の通りである.
 3)部員一顧間間の相互理解度についての調査お互いにどの程度相手を理解しているか,どの程度相手から理解されていると感じているかについ て,部員と顧問の両方の主観的判断を調査した.調査の方法は図1の通りである.
 この調査法は基本的には,落合たち9)の方法を踏襲したものであるが,理解度についての主観的判断の基準として,自分が最も理解していると 感じる人,自分が最も理解されていると感じる人を想定し,それらをそれぞれ1とした相対的判断を求めたという点で修正が加えられている.これは, 「チームメイト以外の最も親しい人」を基準として自己開示度を測定した方法(土屋,中込10))に準ずるものである.


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