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バレー部に所属している女子中学生の食生活の実態調査

研究結果
 対象者の身長,体重,BMI(体重/身長2)ならびに皮下脂肪厚(上腕背部ならびに肩甲骨下部,栄研式キャリバーを使用)の測定結果を表1に示した.
 食事記録からみた栄養摂取状況を表2に示した.体重当たりのエネルギー摂取量を当該年齢の所要量8)と比較すると,1年生48kca//kg,2年生 46kcal/kg,3年生43kcal/kgという目安量に対し,それぞれ55.9±9.2kcal/kg,47.0±5.5kcal/kg,39.2±5.5kcal/kgとなり,3年生のエネルギ ー摂取量が少ない値を示した.たんぱく質およびビタミン類の平均摂取量は,各学年ともいずれも所要量を上回っていた.一方カルシウム摂 取量は,1年生538±132mg,2年生355±106mgと,所要量の水準(700mg)を下回っていた.鉄は,女性においてその摂取不足が問題とされている栄 養素であるが,1年生11.8±1.4mg,2年生11.6±4.1mg,3年生10.2±0.6mgと,いずれの学年も所要量の12mgには達していなかった.総エネルギー摂 取量に占める脂肪エネルギーの割合は,この年代の望ましい摂取比率が25〜30%であるのに対し,1年生31.6±4.0%,2年生32.9±1.5%,3年生 36.2±2.7%であった.食物繊維は第五次改定栄養所要量8)で新たに目標摂取量が示された項目であるが,1日20〜25gの目標量に対し,各学年共, その1/2〜2/3程度の量しか摂取していなかった.1日の総エネルギー摂取量に占める朝食,昼食,間食,夕食のそれぞれのエネルギー摂取割合は, 朝食エネルギー比が1年生21±3%,2年生21±1%,3年生16±8%と,いずれの学年も昼食や夕食と比較して朝食からのエネルギーの摂り方が少なか った.なお,食事記録の期間中,欠食は1例もみられなかった.
 摂取エネルギー1,000kcal当たりの栄養素密度を表3に,栄養素密度からみた所要量に対する充足率を図1に示した.充足率をみるといずれの学年 もたんぱく質,鉄およびビタミン類が概ね所要量に達していたのに対し,カルシウムの充足率が1年生77±18%,2年生52±8%と,所要量を下回って いた.一方,食物繊維の目標量に対する充足率は,いずれの学年も60%前後にしか過ぎなかった.
 体重当たりのエネルギー摂取量,栄養素密度からみた所要量に対する充足率,PFC比といった基準化された数値を用いて主成分分析を行い3因子を 抽出した(表4).この時の累積寄与率は76%であり,3因子の固有値はいずれも1以上であった.抽出された3因子は,それぞれの軸に該当する栄養素 を多く含む食品などを考え次のような解釈を試みた.第1因子に該当する食物繊維,鉄,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンCといった栄養素は,1日の 食事全体の中では主食である穀類や副菜料理に使用する植物性食品および果物からその多くが摂取される.そこで,この因子を「主食や副菜料理 の摂取」の特徴を表す軸であると解釈した.同様に第2因子では,乳・乳製品に多く含まれるカルシウムやビタミンB2,主菜として利用されること の多い動物性食品に多く含まれるたんぱく質に関する変数が該当していることから,「主菜料理や乳・乳製品の摂取」の特徴を表す軸であると解 釈した.第3因子の当該変数が脂質ならびに糖質のエネルギー比および体重当たりのエネルギー摂取量であったことから,この因子を「エネルギー の摂取」と解釈した.


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