日本財団 図書館


5.各種スポーツによる運動処方

 歩・走運動による運動処方の作成に続き、体育科学センターは各種スポーツによる運動処方の作成に着手し、今回、ここに その部を報告することにした。
 歩・走以外の運動種目を用いる運動処方の必要性を感じたのは、健康を目指す多数の日本人成人の運動種目の好みの個人 差、多様性、あるいは、環境差、地域差ということを考えれば、当然のことながら、歩・走という運動様式に限られた運動処方だけ では十分に考えられないからである。すなわち、運動種目の好みという点からすれば、歩・走運動が必ずしも大多数の人たちに 歓迎されるものとは限らず、中には、たとえば、テニス、バドミントンなどのラケット系の球技に興味を持つ人達もあり、また、歩 ・走運動を楽しめるコースは自分のまわりにはないが、小さな体育館を利用することができるという人達にとっては、なわと びやバレーボールがやりやすい種目ということになる。このような事情をふまえれば、歩・走以外の他の運動種目、スポーツ種 目についてもその強度をしらべ、それらの種目への参加が健康づくりに有効であるかどうかを確かめることが運動処方の作成 において重要な問題と考えられるのである。
 そこで、本センターは、各種の運動種目をとりあげ、その強度を求め、その結果とこれまでに明らかにした研究成果を比較検討 することによってこれらの種目を用いる処方の作成にとりかかった。
 本研究では以下に示す運動種目をとりあげたが、その選定理由は、第1に全身的運動で活動に持続的場面があること、第2に一般 に普及しているということにした。なお、紙数の制限があるので、この講演要旨には、研究の手順と結果のあらましを述べるにとど めた。

(1)方法

 1)運動種目
 社会体育あるいは市民スポーツと呼ばれる領域で、参加者数の多い運動種目をとりあげることにし、次の各種目を選定した。
   1)テニス(軟式・硬式) 2)バドミントン 3)卓球 4)バレーボール
   5)キャッチボール 6)水泳 7)ゴルフ 8)アイススケート
   9)体操(ダンス系を含む) 10)なわとび
 これらの各種目のほとんどの種目は、それぞれいくつかの基本技術を持っているので、強度測定は基本技術とそれらが組合 わされたゲーム形式について行われた。

2)被検者
 被検者は男女成人とした。被検者の年齢は種目によって異なるが、全体では18〜57歳の範囲にわたった。人数は1種目4〜27名で あった。

3)運動強度の測定
 各種目の運動にともなう呼吸循環機能を測定したが、強度の指標としては「%Vo2maX」を用いることにした。これは、すでに報 告したランニングによる運動処方の作成にこの強度指標を用いたからである。
 なお、被検者の事情により酸素摂取量の測定が困難な場合は、心拍数を測定し、この値と「心拍数・酸素摂取量関係式」とによ って、%Vo2maxを求めた。この関係式は、あらかじめ個人について実測して求めた場合と、すでに明らかにされている同年齢層に ついての平均の関係式を用いた例とがある。


前ページ    目次へ    次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION