5.心拍数による処方
上記の各種スポーツにおける心拍数を用いる場合に、望ましいことは処方される人の最高心拍数をとらえ、それに対する
割合を求めて個人に処方することが望ましいわけである。
ここでは一般論として述べてみると、最大酸素摂取量の約70%に相当する心拍数は最高心拍数の約80%に相当するという
ことである。体育科学センターではトレーニング効果のあらわれる運動強度は最大酸素摂取量の約70%以上であるとすれば
運動時間は軽いトレーニングで5分間、中等度のトレーニングで15分間、強いトレーニングの場合は30分間と示されている。いま、最高心拍数の異なる個人に示される最大酸素摂取量に対する割合の70%相当の心拍数は次のようになる。すなわち、最高心
拍数が200拍/分の人ならば160拍/分、180拍/分の人ならば144拍/分、160拍/分の最高心拍数を示す人ならば128拍/分という目安
を示すことができる。
また、60分間の運動を持続するときには中等度のトレーニングで、最大酸素摂取量の50%でよいとしている。いま、心拍数でこ
れを処方するとすれば、最大酸素摂取量の50%は最高心拍数の約65%となる。したがって、それぞれの人が示す最高心拍数、例え
ば200拍/分の人ならば130拍/分、180拍/分の人ならば117拍/分、160拍/分の人ならば104拍/分ということになる。これらは全身持
久性のトレーニング効果を得るための十分条件といえるのであろう。しかし、トレーニングを初めて開始する人々にとっては、
直ちにその効果を見出す十分条件に至らなくても、その水準に到達をするための必要条件として、初心者の安全許容限界をど
こに見積るかということは重要な問題であり、当センターでも諸先生方に論議をしてもらわねばならないところである。
例えば平均的勤労者は1日8時間の労働をして、通勤時間に往復2時間を要し、そして翌日に疲労を残さない程度の身体運動を
していると思われる。これらの人々がトレーニングを開始するとすれば10分間の運動から始める。そして徐々に、最初は週1回ず
つ、次第に2週間に1回というように運動の時間を延長するか、運動の強度を増すか、あるいはその両者を組合せてというように
漸増法に従って十分条件に至らしめることであろうというのである。
6.運動中の心拍数の自己管理
運動中に心拍数を数えることはかなりむずかしい。そこで簡単な機器を作製してみた。例えば心拍数120拍/分〜140拍/分の
運動をしょうとすればあらかじめ望ましい目盛にダイヤルをセットする。運動開始とともに心拍数は上昇するが120拍/分に
至るまでは機器は断続音を発し、指定心拍数に達するとその帯域では音が消失する。また、140拍/分以上になると連続音の警
告を発するというものである。
これを用いることによって、運動処方による心拍数の自己管理が容易になると考えられる。
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