3.体力に関する意識
昭和50年に、体育科学センターの体力調査専問委員会のメンバーとして、体力、運動健康に関する基礎的調査を行ったが、演者
が青森県で実施したもののうち、本題に関係のあるものについて述べる。
自己の体力の有無を判定する場合、体力を考える指標として、非農業者は、仕事やスポーツ後の疲労回復、長時間の精神労働へ
の耐久力、運動神経の発達や敏捷性の有無などをあげていたのに対し、農業者では、重い物がもてるか、持てないか、長時間の肉体
労働に耐えるか、否か、などをあげており、未だに筋的負担に対する耐久力を体力と認識しているものが多かった。
従って、現在の体力への満足度では、大いに満足、満足、と答えるものが圧倒的で、運動の必要性については、不必要とするものが
少なくなかった。
このような誤った認識が、農業労働者の体力の低位性に関連しているのであろう。
4.農業労働者の体力と今後の課題
今後の農業は、各分野での機械化が惨透していくために、専従オペレーターや集団的生産組織が増加する一方、機械の個別利用
から集団利用へと移行していくものと思われる。
このためには適性が考慮された、一定レベルの体力の保持者が求められ、分化し、特種な労働階層が形成されていくように思わ
れる。また、機械化によって生じた余剰労働力は複合経営部門へと投下されることになるが、この分野には老人や婦女子が多く就
労することになるであろう。しかし、これらの労働層は貧血や成人病の有病率が高く、健全な労働力に乏しいという現実がある。従
って防衛体力を高める努力が基本的に不可欠となろう。
これらへの対応策としては、現在行われつつある農村環境整備特別事業等の中で、健康増進のための中核的施設の整備や活用を
図ること、既存関係団体との連絡、協調など、本問題解決のための組織化を図ることが焦眉の急かと思われる。
しかし、これにも増して農業労働者のもつ体力の意識革命を図ることが優先するであろうと考える。
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