1.運動処方を具体化するための研究成果
1)処方の際に考慮すべき最も重要な因子は体力差である。したがって、運動処方のひとつのポイントは発揮する体力
(全身持久力を中心とした体力の指標は最大酸素摂取量)の相対的割合にある。
2)全身持久力を高めるための1日の運動時間は、最大酸素摂取量の60〜70%を発揮すれば5〜10分間、50%では60分間必
要である。
3)頻度は最低1週間に1回必要である。
4)5分間を全力で走ったときの酸素摂取水準は丁度最大酸素摂取量の100%に相当する。
5)5分間をあるスピードで走ったとき、そのスピードの全力走のスピードに対するパーセンテージと、そのスピードでの酸素摂取水準の最大酸素摂取量に対するパーセンテージはほぼ一致する。
6)12分走の最高平均スピードは、5分走の最高平均スピードの約90%である。
2.運動処方の具体的手段
1)12分走テストで得られた距離(m)を12分で割る→12分走の最高平均スピード。
2)12分走の最高平均スピードを0.9で割る→5分走の最高平均スピードに換算。
3)処方された運動強度(最大酸素摂取量の相対値)を掛ける→処方スピード。
たとえば、WHOは成人の体力向上には、最大酸素摂取量の70%の強度の運動を1日30分間、毎日行うことを勧告している。
これを本方式に従えばつぎのように処方すればよい。
?12分走テストを行う。この結果が2,400mであったとすれば、
12分走の最高平均スピード = 2,400m÷12分 = 200m/分
?5分走に換算する。
5分走の最高平均スピード = 200m/分÷0.9 = 222m/分
?最大酸素摂取量の70%に相当する処方スピードを求める。
70%に相当する処方スピード = 222m/分×0.7 = 155m/分
したがって、1日に155m/分×30分=4,650mを30分かけて走れば良いことになる。
研究の進展段階で、被験者の医学的検査が重要な課題となった。そこで、朝比奈一男教授を中心に体育科学センターの
研究を推進されている医学関係の委員の方々がメディカルチェック委員会を組織した。同委員会は最終目標を、健康づ
くり運動を実践する国民一人ひとりが行うことの出来るチェックの作成に置き、1年間にわたり、関連文献の考証、事故
例の研究、さらには法的責任まで検討した。この成果は健康づくり運動カルテの重要な役割を果たしていることはいう
までもない。
このようにして完成した体育科学センター方式による健康づくり運動カルテの構成と内容は次の通りである。
前ページ 目次へ 次ページ
|
|
|