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体育科学センター第4回公開講演会講演要旨 3


健康づくり運動カルテについて



青木 純一郎


 近代文明の発達に伴う運動不足の健康におよぼす弊害について、観念的にはなかば国民の常識になってきた。 しかし、運動の積極的実践という面からみると、その常識がどれだけ国民一人ひとりに危機感をもって受け入れら れているかは疑わしい。
 このような背景にはいくつかの原因があるであろう。たとえば、国民への啓蒙が充分でないこともあろう。また、どのように 運動を行えば健康の維持増進に結びつくかに関する基礎的な研究が遅れていることもあろう。
 かかる社会的状況を踏まえて、体育科学センターは、昭和45年発足と同時に、故猪飼道夫教授ならびに鈴木慎次郎栄研生理学 部長を中心に全国から体力学の研究に従事する研究者を招いて、「運動処方」の研究を推進するプロジェクトチームを組織した。
 同チームは数次にわたって一堂に会し、研究方針をディスカッションした。その結果、最大酸素摂取量を研究のバックボーンと して、呼吸循環機能を中心とする全身持久力を向上させるための運動強度、時間および頻度の研究を展開することになった。
 数年にわたる研究で数々の貴重な成果があがった。そこで、広田公一教授を中心に数人のメンバーがこれらの成果を整理検討 し、運動処方の具体的手段を明らかにしょうとした。また、運動処方に不可欠な体力診断テストには12分走テストを採用し、各地 の研究者から数多くのデータを収集した。これらはコンピュータ処理され、日本人のための“体力区分表”も完成させた。それら をまとめて、解説したものがこの度刊行された「体育科学センター方式健康づくり運動カルテ」(講談社)である。
 同書に示された運動処方の具体的方法とその根拠を概括すると次の通りである。


順天堂大学
於:国立科学博物館昭和51年6月5日


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