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[Xl]HDL亜分画、特にpreβ-HDLの地域差、臨床的意義および抗動脈硬化作用の検討


河野幹彦 自治医科大学附属大宮医療センター
金丸勝弘 椎葉村立国保病院
日高利昭 国保北浦診療所
川上正訂 自治医科大学附属大宮医療センター

?.はじめに
 高比重リポ蛋白(HDL)-コレステロール(HDL-C)が冠動脈硬化症の負の危険因子であり、その主な作用機序として、末梢細胞や末梢組織に沈着したコレステロールを引き出し肝臓へ運ぶ、いわゆる“コレステロール逆転送”作用が考えられている。また、HDLには抗酸化作用が存在することが明らかとなり、HDLの新たな抗動脈硬化作用として興味が持たれている。しかし、HDLは単一なリポ蛋白ではなく、いくつかの亜分画の集合である。大部分のHDLはアガロース電気泳動上α位(α-HDL)に存在するが、一部分はpreβ位に存在する(preβ-HDLと呼ぶ)。細胞から引き抜かれたコレステロールはpreβ-HDLに最初に出現することから、preβ-HDLはコレステロール逆転送経路に非常に重要であると推察されるが、preβ-HDLの臨床的意義については未だ明らかではない。
 今回、へき地(山村、漁村)と都会の住民の血清HDL亜分画を半定量し、HDL亜分画の地域差を検討した。また、preβ-HDLの抗動脈硬化作用としての抗酸化作用を検討した。

?.対象と方法
 A.対象:宮崎県椎葉村(山村)57名(男19名、女37名、平均年齢57歳)、宮崎県北浦町(漁村)50名(男26名、女24名、平均年齢52歳)、埼玉県大宮市(都会)18名(男14名、女4名、平均年齢57歳)における検診者を対象とし、早朝空腹時に採血した。

B.方法:
  1.preβ-HDLの測定:血清をアガロース電気泳動した後、ニトロセルロース(NC)膜に転移した。NC膜を抗アポ蛋白A1抗体でECL法により免疫染色した後、イメージアナライザーによりα-HDLとpreβ-HDLの比率を測定した。
  2.HDL亜分画(HDL2、HDL3、preβ-HDL)の調整:自治医科大学附属大宮医療センターに通院中の患者からEDTA採血した早朝空腹時血漿を超遠心法により低比重リポ蛋白(LDL)およびHDL亜分画を分離した(LDL;1.019<d<L063、HDL2;1.063<d<1.121、HDL3;1.121<d<1.21、VHDL;1.21<d<1.25)。

 

 

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